本牧 気まぐれ歴史散歩 84 レーモンドとスタンダード石油社宅
アントニン・レーモンドはチェコで生まれた建築家です。アメリカで著名な建築家フランク・ロイド・ライトの事務所で働いていました。初代帝国ホテルの設計を任されたライトの助手として大正8年(1919年)に来日したレーモンドは、大正11年(1922年)に独立。日本で数々の美しい近代建築作品を造りました。エリスマン邸やフェリス女学院10号館・パークシティ本牧管理棟(復元)など、近隣で目にする作品も多いです。
レーモンドは、第二次世界大戦が始まるとアメリカへ戻り、焼夷弾の効果検証実験のために日本家屋を再現することに協力し葛藤したとも言われていますが、終戦後の昭和22年(1947年)に再来日し、戦後も日本で活躍して各地に数々の名作を造っていきました。その戦後最初の作品となった建物が、本牧元町の丘の上に造られたスタンダード石油社宅です。東京湾が一望できる丘の上に、コンクリート打放しで宙に浮くようなフロアを持ち、大型の木製サッシをはめ込んだ工法とデザインは斬新なものであり、建築史・文化史上、非常に貴重なモダニズム建築と称えられ、本牧のシンボルのひとつとなりました。
敷地が売却されて空き家となった社宅を保存し活用していこうと、多くの署名や陳情が横浜市に寄せられましたが、平成18年(2006年)に解体され、その姿を消しました。
スタンダード石油社宅があった場所からちょっと登ったところに八聖殿が建っています。(文・横浜市八聖殿館長 相澤竜次)
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