井土ヶ谷上町第一町内会(佐々木哲夫会長)が所有する町内会館=井土ヶ谷上町35の23=がこのほど、横浜市の歴史的建造物に登録された。会館は戦前から「見番(けんばん)」と呼ばれる芸妓たちの事務所兼稽古場だった建物で、現在も外観に華やかな雰囲気が残る。見番として使われた建物が市内で現存する例はほかになく、希少性が高いことなどから登録された。
市は個性的、魅力的な歴史的建造物の保全・活用を進めようと、景観上の価値があると判断した建物を登録や認定している。
市都市整備局によると、歴史的建造物の登録は市内で201件。個人宅が含まれるため、通常は非公表。南区では社寺など6件が登録されている。登録建造物のうち、景観上のより重要な価値が認められ、所有者の同意が得られれば認定される。認定を受けると市から改修費などの一部が助成される。認定建造物は90件あり、南区には、関東学院中学校や大原隧道、浦舟水道橋がある。
同町内会は防災活動に力を入れており、昨年から南区役所や同局の協力を得て防災まちづくりの勉強会を始めた。登録は勉強会の中で持ち上がった。
木造、築78年
登録された建物は1937年建築の木造2階建て。当時、井土ヶ谷は花街で、多くの芸妓がおり、建物は「見番」と呼ばれる芸妓組合の事務所兼稽古場だった。58年から県警の警察官寮として使われ、76年に同町内会が取得。改修し、町内会館にした。現在は会議などのほか、月1回、井土ヶ谷地区の子育てサロンとして親子が利用する。
市内唯一の「見番」
建物の正面は入母屋(いりもや)造と呼ばれる伝統的な構造。玄関の上部の欄間が細かい組子になっている。2階の大広間は芸妓の稽古場として使われていた。外壁や内部の一部を改修しているものの、見番の雰囲気は残されている。同局は「見番として使われた建物で市内に現存するものはほかにない」とし、希少性が高いことから登録を決めた。町内会館の登録も初めてだという。
市側は歴史的建造物の外観保全を優先するが、内部の活用は積極的に勧めている。11月7日の登録証授与式で同町内会の佐々木会長は「これをきっかけに会館を多くの人に知ってもらい、良いものにしていきたい」と語った。
今後、耐震など、建物の安全性を向上させ、災害時に住民が宿泊できる体制作りや会館で昔の写真展を開くことも検討している。
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