六ツ川在住で現代美術家の渡辺篤さん(38)=人物風土記で紹介=が黄金町駅周辺で開催中の「黄金町バザール」で作品を展示している。うつ病やひきこもりを経験し、作品で人が抱える「心の傷」を表現。”元ひきこもり”として「発信する宿命がある」と言い、心の傷に光を当てて輝かせる約40作品を公開する。
10月1日から始まった「黄金町バザール」はかつて違法風俗店が密集していた黄金町駅から日ノ出町駅高架下の店舗跡地を活用。アートでまちに新たなにぎわいを生み出そうと2008年から始まった。
黄金町で活動する芸術家のほか、アジア各国のアーティストが作品を公開。渡辺さんはゲストアーティストとして同バザールに初参加している。
渡辺さんが公開する作品は、人の「心の傷」を書き写した直径50cmほどのコンクリートの板。渡辺さんは4月から自身のホームページに「あなたの傷を教えてください」と明記して匿名での投稿を募集。性的虐待を受けた経験や流産した女性の言葉など、寄せられた投稿文を金色の絵の具で板に書き記し、ハンマーで割って接着剤で修復した。陶芸の伝統技法として知られるこの「金継ぎ」と呼ばれる作業を行うことで、昇華されて、いずれは輝いていく「心の傷」を表現した。
元ひきこもり
市内で生まれ育ち、東京藝術大学に入学した渡辺さんは、芸術家を目指す周囲との闘いや失恋などのストレスでうつ病を経験。2年間、大学を休学したことがある。
復学し、同大学大学院を修了したが、所属したグループ内でのトラブルなどが原因でうつ病が悪化。実家にひきこもった。ひきこもり生活は約3年に及んだが、インターネットで美術に関する意見を発信したことなどがきっかけとなり、「自分の存在を証明しなければ」と美術家として再起することを決めた。
一般社会からは「異質」と見られがちなひきこもりの人が世の中に多くいることを当事者になって初めて知り、美術家として「『ブラックボックス』に入った人の居場所を作ること」が宿命のように感じたという。
同バザールを主催する黄金町エリアマネジメントセンターの関係者は、「渡辺さんの作品で誰もが持っている可能性がある心の傷が輝き、未来につながれば。開催中は『心の傷』を募集している」と話す。
バザールは11月6日まで。詳細などの問い合わせは同センター【電話】045・261・5467。
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