〈連載〉さすらいヨコハマ㉝ 映画と横浜のホテル 大衆文化評論家 指田 文夫
幕末の開港には、西洋風のホテルがあった横浜だが、戦後の1960年代後半まで、シティ・ホテルは、横浜駅西口の「横浜東急ホテル」、山下町の「ホテルニュー・グランド」と「シルク・ホテル」、さらに磯子駅の上の「磯子プリンス・ホテル」だった。現在のように、みなとみらいをはじめ、横浜駅東西、新横浜、さらに関内など、多くの地区にホテルがあるのとは大きく事情が異なっていた。
その中で、映画に多く出てくるのは、ホテル・ニューグランドで、石原裕次郎と浅丘ルリ子の『赤いハンカチ』(1964年)では外観と内部の様子も見える。
小椋佳の「少しは私に愛をください」が歌われる映画『初めての愛』(72年)では、岡田祐介(東映会長)の相手役・島田陽子がホテルの受付を演じている。また、『ニッポン無責任時代』(62年)で植木等が社長になり、披露のガーデン・パーティは、磯子プリンス・ホテルの広い庭で、眼下に埋立て前の根岸湾が広がっている。
(文中敬称略)
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