蒔田町在住の森あけみさん(68)が描いた絵がこのほど、自己免疫疾患の患者を対象にしたアートコンテストで入賞した。森さんは、高校3年生時に膠原病の一つで難病の「全身性エリテマトーデス」(以下、SLE)を患い、倦怠感などに悩まされながらも40年間、病とともに生きてきた。絵を通して森さんは「これからもなお生きていく」と強い意志を示している。
膠原病と40年間向き合う
コンテストは医薬品企業「アッヴィ」が主催した「アッヴィ 自己免疫疾患 アートプロジェクト『パースペクティブズ』」。関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患がある人を対象に病と向き合いながらも、自身の視点でとらえた症状の改善から見出した日々の喜びや新たな目標、希望などを自由に表現した作品を募った。全国から81点の絵画や写真、書道、工芸品などが応募された。美術家らの審査により、10点の入賞作品が選ばれ、森さんの絵画が「審査員賞」を受賞した。
森さんは美術大学受験を目前にした高校3年生の時、突然頬に発疹ができ、高熱や倦怠感に悩まされた。「薬を飲んでも熱が下がらず、何が原因か分からなかった」と振り返る。約3カ月間入院し、症状は改善されたが、疲れやすさなどは残ったままだった。はっきりした病名を知らぬまま、26歳の時に症状が再発。手の皮がむけたりしもやけのような症状が続き、いくつかの病院を回り、SLEと診断された。
SLEは膠原病の一つで、発熱や倦怠感、関節炎などを引き起こす国の指定難病。厚労省の発表では2018年3月末時点で全国に約6万人の患者がいるとされている。投薬によって改善されることが多い。
投薬を続けた結果、森さんの症状は落ち着いているが、疲れやすさは今も残る。紫外線を浴び過ぎないように、外出時は日焼け止めを塗るなどの対策も欠かせない。
余命3カ月の危機も
趣味の日本画は「ハマ展」で何度も入選するほどの腕前。今回のコンクールを知り、買ってきたハイビスカスを描いた。そこに「ちょうどそこに飛んできた」という1匹のカラスアゲハを加えた。作品は「S20号」と呼ばれる約72cm四方の大きさで、題名は「なお 生きる」とした。実は最初の発症時、森さんの母親は医師から「生きられるのはあと3年くらいかも」と伝えられていた。母親は森さんを気遣い、そのことを何十年も伏せていた。母親は5年前に他界。「自分が両親より早く逝くことなく、見送ることができた。その先の人生を生きていくという思いを絵に込めた」と森さんはいう。審査員からは「鮮やかなハイビスカスから作者の強いメッセージを感じる」と評価された。
現在も3カ月に1度は検査を受ける。「生活と病気を切り離して考えられない。SLEと上手に付き合っていく」と語る。コンテストの表彰式は6月20日に東京で行われる。
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