六ツ川の県立こども医療センターの新生児集中治療室(NICU)が改装され、9月から生まれ変わった。親子で過ごせる個室を新たに6室設けたほか、母親が赤ちゃんのそばにいられる工夫を施すなど、退院後の自宅での生活を見据えた作りになっており、関係者は「家族全体を支える場にしたい」としている。
同センターには病気の子が多く入院している。全国でも有数の高度な医療を受けられることもあり、患者は遠方からもやって来る。NICUは1992年の開設以来、8650人の新生児を診てきた。
同センターは日本で初めて子ども病院に産科が併設された。当時、NICUは12床だったが、増床を繰り返し、2009年に21床になった。しかし、建物全体の老朽化や医療機器の巨大化などにより、改装に踏み切った。
24時間寄り添う
改装により、別の診療科が使用していた場所を上階に移動させるなどしてスペースを拡大。医師らが機器に囲まれながら動いている状況から、余裕をもってスムーズに移動できるようになった。加えて、個室6床を新設。産後間もない赤ちゃんと母親が24時間、寄り添って過ごせるようにした。これまで、母親は上階に入院していたため、赤ちゃんとの面会の度に移動を余儀なくされ、身体に負担がかかることも少なくなかった。個室にすることで、照明を調整できるため、睡眠時に部屋の一部を暗くすることが可能になった。
自宅生活の助走に
NICUを担当する豊島勝昭医師は「ベッドがあり、親子が24時間一緒に過ごせるNICUは全国でもほとんど例がない」と話す。入院時に親子が別々の場所で過ごすと、退院後に自宅で親子一緒の生活に戸惑うことがあるという。豊島医師は「NICUでの時間を家族生活の準備期間にしてほしい」と願う。医療の進歩でNICUに来る赤ちゃんの生存率は大きく上がったが、それにより、「命を救う場所」という役割に「家族全体の生活を支える場所」が加わった。
改装にあたり、寄付を募り、約1千万円が集まり、県の予算ではカバーできなかったNICUの外で家族が待機するスペースなどを作れた。NICUの卒業者や家族からの支援も多かったという。
豊島医師は「センターにとって、NICUは入口であり、その最初の部分のかかわりを大切にしたい」としている。
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