堀ノ内町在住の漆器工芸師・宮崎輝生さん(83)が10月12日、神奈川県が文化の発展向上に貢献した個人や団体に贈る「神奈川文化賞」を受賞した。宮崎さんは「丹精込めて作ったものが評価されるのは嬉しい。職人冥利に尽きる」と話す。
神奈川文化賞は神奈川県と神奈川新聞社が共催で実施。毎年、県内文化の向上発展に努め、その功績が顕著な個人、団体に対して贈られている。
海外からも評価
宮崎さんは、横浜開港を機に欧米諸国に注目された「芝山漆器」を作る職人として68年のキャリアがある。現在、国内で芝山漆器を専門に作る「芝山師」は宮崎さんだけだという。1996年、市が優れた技能者を認定する「横浜マイスター」の第1期に選ばれたほか、2010年に「横浜文化賞」を受賞。アメリカのキンゼイ国際芸術財団からは、伝統的な細密芸術の分野で活躍する職人などを讃える「ゴールデン・ドラゴン賞」が贈られるなど、海外からも高い技術力が認められている。
1997年には、寒川神社遷宮に伴い、御帳台の螺鈿を調製した。
芝山漆器は貝や像牙などを表面にはめ込むなど、高度な技術が求められる。長いものでは完成まで3年を要し、制作工程には、複数の職人が関わる。最盛期の明治時代に数百人いたといわれる職人は現在、宮崎さんのみ。
後継者探しが急務だが、宮崎さんは「繊細な画力や手先の器用さ、長時間の工程をものともしない忍耐力などが求められるので、継承が難しい」と簡単ではないという。
「匠の技」次代に
市は宮崎さんの卓越した技術を次代に知ってもらおうと、10月に開かれたテクノロジーの祭典「横浜ガジェットまつり」で、VR(仮想現実)で芝山漆器の制作工程を体験できる企画を実施。体験者からは「繊細な手の動きが求められ、匠の技に魅了された」などの声が寄せられた。市は今後も芝山漆器の周知に努め、後継者の発掘、育成に力を入れていく。
宮崎さんの作品は11月1日まで中区の三溪園・鶴翔閣で開催されている「ヨコハマ和の匠展」で公開中。小さな菊の花を散らした文様の硯箱などが観覧できる。入場無料。問い合わせは 三渓園【電話】045・621・0634。
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