災害時に避難所での生活が難しい人の受け入れ先となる「福祉避難所」の運営シミュレーションや課題を語り合う研修会が3月6日、南区役所で行われた。南火災予防協会(島田秀世会長)が防火防災研修会として実施し、福祉避難所となる地域ケアプラザや施設の職員など約40人が参加。カードゲームによる図上訓練では、避難者の受け入れなどで難しい判断を迫られることが多く、様々な課題が浮き彫りになった。
南区に26カ所
福祉避難所は、小・中学校の地域防災拠点では生活が難しい人の二次的な避難場所。高齢者や障害児・者、妊産婦、乳幼児など、特別な配慮が必要な人は、地域防災拠点での避難生活が難しい場合もある。各拠点では要援護者向けに専用スペースを確保することになっているが、それでも避難生活に支障があると判断された人は福祉避難所が受け入れ先となる。
発災後、地域ケアプラザや特別養護老人ホームなど、区と協定を締結している施設のうち、区の要請を受けたところから開設する。南区では26カ所が対象。入所は保健師などの専門職が本人の状況や要介護認定の有無などを確認し、避難の必要性を判断して決める。
研修会には、同協会会員16人のほか、福祉避難所になっている地域ケアプラザや介護老人福祉施設、区役所職員など18人も参加。講師に一般社団法人「減災ラボ」代表理事の鈴木光さんを招いた。鈴木さんは研修会前日まで能登半島地震の被災地で支援活動を行っており、現地の様子や過去の災害事例を聞いた。その後、5〜8人の5グループに分かれ、図上訓練「横浜市福祉避難所版避難所運営ゲーム(HUG)」を行った。
迅速な判断必要
HUGはカードを使ったシミュレーション。参加者は福祉避難所を運営する立場となり、実際の災害発生時と同様に、福祉避難所へ次々とやって来る避難者や支援の要望、メディアの取材申込などに対応し、避難所の図面上に受け入れた人を配置。車いす利用者や要援護者の家族、ペット同伴者やボランティアの受け入れに対して、迅速に判断、対応していかなくてはならない。
終了後、グループごとに話し合い、運営上で工夫した点、悩んだ点などを発表。「感染症疑いの人、ペット同伴の人、アレルギーのある人、医療的ケアが必要な人をどう受け入れるか、具体的に想定しておくべき」などの意見が出た。
物理的に受け入れ可能な人数が限られる中、断らざるを得ないケースもあり、可否の判断基準や断り方などの難しさも課題となった。参加者からは「目の前で支援を求める人を断るのは心苦しいが、本当に必要とする人が入所できなくなるのは問題」、「福祉避難所がどういうものか、多くの人に理解してもらうことが必要」との声が出た。
認知度15%
市が2021年に行った市民アンケートによると、福祉避難所の意味を知っていると答えた人は15・1%にとどまる。圧倒的に認知度が低く、存在を知ってもらうことも大きな課題となる。
講師を務めた鈴木さんは「実際の災害時には福祉避難所を福祉関係者だけで対応するのは難しい。日頃から行政、近隣住民、事業所などと連携し、いざという時に備えてほしい」と話し、地域の総合的な防災力を高めていくことの重要性を訴えた。
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