横浜市が進めるカジノを含むIR(統合型リゾート)事業。その具体計画を示す「実施方針」について市は、市会での説明を見送ったものの、8月に公表することは堅持している。前提となる国の基本方針が未だ示されない中、変更のない来年1月からの申請期間に間に合わせるためだ。市は延期を求める議論があることなど、現状を国に伝える意向だ。
実施方針は、IR整備法により自治体が定めなければならないIR事業の根幹となる計画。区域の位置、規模、施設の種類など具体的な内容を示し、事業者の応募条件や選定基準も盛り込む。
コロナで延期
当初、市は年初に示されるはずだった国の基本方針を踏まえて6月の公表を予定。しかし、IRに関わる国会議員の汚職事件や新型コロナなどの影響で国の方針公表が大幅にずれ込んだため、市は予定を延期し、8月の公表とした。
その後も国の方針は示されず、6月30日の市会常任委員会で予定されていた実施方針の説明は見送りとなった。理由について市は、感染症予防や接触規定などが含まれる国の基本方針を踏まえた上で公表すべきと説明。8月中に国の方針が示されない場合は、「望ましくない」としつつも国の考えを確認して市として公表するかどうか判断するとした。
専門家は「要検討」
国のIR推進会議で委員を務める東洋大学客員教授の美原融氏は「行政と地域の立法府がしっかりと支えなければIRは実現できないことが全ての前提」とし、横浜については「今の予定通り強行することが得策といえるのか慎重な検討が必要」と指摘する。
横浜のIRを巡っては、反対する市民団体が誘致の是非を問う住民投票や林文子市長のリコール実現に向けた活動を展開。5月には、横浜に関心を示していた米国の「ラスベガスサンズ」が日本市場への参入見送りを発表している。
説明動画を公開
市はIR誘致への取り組みを林市長が説明する動画の公開を7月14日から始めた。
昨年12月から林市長が出席する市民説明会を各区で実施。南区では今年1月17日にみなみん(南公会堂)で行われた。しかし、コロナ禍で2月14日の港北区の開催を最後に中断。収束の見通しが立たず、残りの戸塚、都筑、栄、青葉、瀬谷、泉の6区の開催が困難と判断し、説明会に代わる形で動画を作成した。
動画は約45分間。冒頭で林市長がコロナ対策について説明。続いて、誘致に至った理由やギャンブル依存症対策などを説明している。最後は説明会で参加者から出た質問について答えている。
コロナ禍でも誘致を進めることや、市民が直接声を届けられない動画を説明会の代わりにしようとする姿勢に市議や市民から疑問や反対の声が出ている。動画では「IR事業をやめてコロナ対策に注力すべきではないか」という質問に林市長は「感染症対策にしっかり取り組んだ上で将来への備えとして、IRもほかの政策と同じように検討準備を進めている」と回答した。動画は市のYouTubeチャンネルで視聴できる。
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