「来日当時は、ハラール(イスラム教の教義で食べても良いとされるもの)の食事しかとれないことや、決まった時間に礼拝をしなければいけないことなどに、理解を示してくれる人は少なかった」。そう語るのは、都筑区にあるイスラム教の礼拝所「ジャーメ・マスジド、横浜」の運営委員、林アルタフさん。約30年前、パキスタンから来日した林さんは、今の日本での暮らしについて「以前と比べ、近年はハラール食に対応した飲食店や、仕事中の礼拝を認めてくれる企業が徐々に増えてきた」と話す。特に「食」に関しては、現在はインターネットの普及によりハラールの食材が簡単に入手できるという。「日常の中で、住みにくさを感じることは少なくなってきた」
しかし、ムスリムたちが不便さを感じる場面が無くなったわけではない。日本で家庭を持った彼らの子どもが成長すると、小学校給食という新たな課題が浮上した。林さんは「献立表を見て、食べられないものがある日は、弁当を持たせなければいけない」と話す。
ハラール対応の給食
泉区にある横浜市立飯田北いちょう小学校は、児童の半数近くが外国籍。今年も春まで2人のムスリムの児童が在籍していた。同校はムスリムの児童が在籍中、豚肉など彼らの食べられないものが給食に入る際は、その食材のみを除去したハラール給食の提供を行っていた。「ほかの児童の給食調理に影響がないことを前提に、専用の鍋で調理し、専用の食器で提供していた」と田中秀仁校長。「食育の観点からは皆で同じものを食べ、食に興味を持ってもらいたい考えもある」
前身である学校のころから、10年以上も実施されているこの取り組み。だが現状、横浜市教育委員会は給食について宗教への配慮を各校に求めてはおらず、外国籍児童が少ない、多くの学校では実施はまだ難しいようだ。田中校長は「アレルギーの対策で精いっぱいの所や、調理器具の不足など物理的な壁もある」と指摘。今後については「さらに日本で暮らす外国人が増え、ムスリムの人口も多くなれば、同様の取り組みをする学校が増える可能性は考えられる」と話した。(続)
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