今井町在住の今井則道さん(72)がこのほど、三浦義意の生涯を描いた歴史小説『居神(いがみ)-三浦大介荒次郎御伽話(おとぎばなし)』(発行/(株)文芸社)を出版した。相模国に乱入した北条早雲に立ち向かい、のちに「居神さま」と崇められた三浦大介荒次郎義意の誇り高き生涯を、穏やかな「ですます調」で描いた作品だ。
三浦半島を本拠とし、鎌倉幕府成立にも大きく関わった三浦家は歴代の当主が「三浦大介」と号した。本作で描かれている三浦荒次郎義意は、相模三浦家最後の当主だ。戦国大名の先駆けとして知られる、伊豆国の北条早雲の侵攻に対抗し、長きにわたって籠城戦を継続。最後はわずか百人ほどの寡兵で2万を超える北条軍に果敢に突撃して散ったと伝えられている。「八十五人力の勇士」の異名を持ち、身長は2m27cm、3mもの大きな金棒を武器として携える怪力の大男であったという義意は最期の戦いで、一人で500もの北条軍を討ち取ったという逸話も残る。
「真の英雄」知って
今井さんはまえがきに「我々の知る有名な武将たちのほとんどが、私欲で他国に押し入り、領土をかすめ取った侵略者とその配下たちでありました」と記したうえで、義意を執筆テーマとした思いを「今の時代だからこそ、侵略者ではない『真の英雄』の存在を広める必要があると感じたから」と語る。
執筆期間は2年。読者がより親しみを持てるよう、語りかけるような「ですます調」の文体に統一した。執筆にあたっては、三浦や横須賀に点在する義意ゆかりの地に何度も足を運び、「三浦一族研究会」の指導も受けてイメージを膨らませながら書き上げた。「勇猛果敢だが心優しく、文化的教養も高い荒次郎義意が成長していく姿を楽しんでもらえれたら」と今井さんは話している。
今井城も登場
県立光陵高校のソフトテニス部で、20年にわたり外部講師を務めてきた今井さん。本作は、講師を引退後に楽しんでいる、趣味の城巡りの最中で浮かんだ構想を小説化したものだ。
劇中には、金剛寺(今井町)の裏手に建っていたと伝わる今井城も登場する。同城は、今井さんが歴史を好きになるきっかけとなった、思い入れの深い場所だ。「自分の住む町に城があったということを長年住んでいて知らなかった。今井城を機に、城巡りを楽しむようになった」と振り返る今井さん。「地元の歴史を知って、当時を生きた武将たちに親しみをもって欲しい」と話した。
小説は四六判で全292頁。税込1650円。購入は文芸社のホームページやネット通販サイトのほか、紀伊国屋書店などで注文できる。
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