文化庁の諮問機関の一つ「文化審議会」がこの程、活字と手書きで字体が異なる常用漢字について解説書を作成する方針を打ち出した。元々、保土ケ谷区の「保」は手書きの際、右側の「口」の下は「木」ではなく「ホ」と表記される機会も多くあり、「混乱を招くのでは?」と懸念されている。区名の表記で議論が行われるのは大きい「ケ」で統一された2009年以来、5年ぶり。
パソコン等の普及で活字の漢字に接する機会が圧倒的に増えている中で、戸籍など行政関係の書類には手書きの漢字が依然、多く使用されている。
例えば鈴木さんの「鈴」の字は、活字では「令」だが、手書きの際は一部を「マ」と記すケースが多い。今回の解説書作成に向けた議論は、こうした現状を踏まえ、混乱を解消させるのが主な狙い。文化庁は「(手書きと活字)どちらの字体も間違いではない」としながらも今後、行政機関に対して活字体を用いた書類作成を求める可能性などを示唆している。
「ケ」とは事情異なる
活字と手書きで字体が異なる漢字の中には保土ケ谷の「保」の字も含まれている。区は5年前、それまで「ケ」と「ヶ」が混在していた区名表記を大きい「ケ」で統一。しかし区民から「『保土ヶ谷宿』の正式表記は小さい『ヶ』。古来の地名を否定するのはおかしいのでは」といった意見が寄せられるなど、一部に混乱を招いた経緯がある。
再び降って沸いた区名表記の問題に、区役所の担当者もやや困惑気味といった様子。総務課の清水克彦課長は「行政文書は常用漢字に基づいており、正しい表記は『保』(口の下は木)です」と明言しながらも「『ケ』の字を統一した際とは事情が異なる」と説明する。
両方OKを強調
清水課長によれば「小さい『ヶ』は正確な漢字ではなく全角文字、半角文字といった記号的な意味合いのまま普及してしまったため、(常用漢字に基づくという原理原則からも)正しい表記(大きい『ケ』)に統一する必要があった」と当時の事情を分析する。
その上で今回の「保」の字の件については「どちらも間違いではない」という文化庁の見解を引き合いに「あくまで『書き手のクセ』、『筆跡のあや』の範疇(はんちゅう)。条例には従うが『木』でも『ホ』でも構いませんよ」と明言する。
これまでも区役所窓口で戸籍謄本などを取り寄せる際、(旧字体など)手書き文字のまま、活字への変換を求めないケースに対しては、一旦その部分を空白にして出力し、「外字扱い」という注釈を入れた後、手書き対応している。
今後も同様に、行政への提出書類の中で「木」ではなく「ホ」で表記された「保」の字があった場合でも、修正を求めたり、受付処理に支障を来したりする事は「一切ありません」と話している。
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