日蓮宗樹源寺 権住職 日比(ヒビ)宣仁(センジン) 連載31 法話箋 〜鹿苑〜 「色香中道」
「一色一香無非中道(いっしきいっこうむひちゅうどう)」は、「一色(いっしき)も一香(いっこう)も中道(ちゅうどう)に非(あら)ざる無(な)し」と書き下し、「色香中道(しきこうちゅうどう)」と略します。この一句は、中国仏教の一派である天台宗(てんだいしゅう)(六世紀頃〜)で強調され、最澄(さいちょう)(七六六〜八二二)をはじめとする日本天台宗に受け継がれ、日本仏教の根幹思想となりました。
色(しき)と香(こう)とは、いずれも物質のことであり、中道(ちゅうどう)とは悟りのことです。つまり「すべての物質に、悟りでないものはない」という意味合いになります。我々を取り囲む環境は悟りの世界に他ならない、ということです。
この思想は、日本人の自然観に大きな影響を及ぼしました。春の芽吹きの香り、夏の蝉時雨、秋虫の涼しげな鳴き声、冬にしんしんと降り積もる音なき雪の音。以上のような情緒を感じ取ることができる日本人の感性の根底には、「色香中道(しきこうちゅうどう)」思想があると言えるでしょう。日常生活から小さな幸せを感じ、それらに感謝をしながら生きて行ければ良いのではないでしょうか。
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