神奈川県のレッドリスト2020で絶滅危惧II類に指定されている希少植物「カザグルマ」が帷子川に架かる川島町の学校橋から西谷中学校方面に延びる坂途中の林縁で大輪の花を咲かせた。近年は里地や里山に代表される自生地の消滅、採集や盗掘などによって数が激減し、環境省のレッドリスト2020で準絶滅危惧種に属する。自生地は市内では保土ケ谷区だけとされている。
「カザグルマ」はキンポウゲ科のクレマチス原種のひとつで、19世紀にシーボルトによって日本からヨーロッパに紹介され、現在のさまざまな大輪系品種の基礎になっている花だ。落葉性のつる植物で5月上旬ごろに直径10cmを超える花を咲かせる。
花びらのように見えるがく片と言われる部分がおもちゃの「風車」を連想させることから「カザグルマ」の名が付いたとされているこの花は、かつては日本各地で見られた。しかし、開発による環境の変化、その珍しさから一部の園芸愛好家が苗を引き抜き持ち帰ることもあり、自生地は年々減少。県内では保土ケ谷区内と相模原市内でのみ自生が確認されている。
雑草と見分け付かず除草時に刈り取り
約60年前には、帷子川沿いの斜面地や現在、環状2号線が走る谷などで大輪を咲かせていたという。しかし、河川改修や環状線の建設、民地開発工事などにより個体数が減少。さらに花が枯れた後は雑草と見分けがつかないため、「除草」の際に刈り取られてしまうケースも多い。
区内では数年前まで環境保全活動団体が自生地を手入れし、苗に印を付け株周りを除草するなどしてきたが、メンバーの高齢化もあり解散した。
珍しいケース「良く残ったな」
国立科学博物館筑波実験植物園(茨城県つくば市)の研究員で、過去に川島町の自生地も視察したことがある村井良徳さんは「人口密集地の都市部に自生地があるのは非常に珍しいケース。『良く残ったな』という印象。この貴重な自生地を守っていくためには適度に人が手を入れる必要がある。地元から保全に向けた機運が高まってもらえたら」と話している。
相模原市内で活動する「相模原のカザグルマを守る会」の西康夫会長は「とても貴重な植物で、まずは地域に暮らす人々に『カザグルマ』の存在を知っていただき、見守っていただくことが大切。自生地それぞれで固有の遺伝子を持つので、自生株の枝を少量採取して挿し木として育成していくことも、種を守る方法のひとつ」と話す。
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