日蓮宗樹源寺 権住職 日比(ヒビ)宣仁(センジン) 連載39 法話箋 〜鹿苑〜 「因縁法」
釈迦の悟りの内容は『雑阿含経(ぞうあごんきょう)』巻一二(大正二・八四頁中)に説かれる「因縁法(いんねんほう)」です。これは経典に「此有故彼有(これあるゆえにかれあり)」と説明されます。「此(私)」が存在する故に「彼(周囲の人々を含む環境世界)」が存在している。A君にとってA君が「此」であり、B君は「彼」です。一方、B君にとってはその逆です。つまり、「此」と「彼」は相互依存していて、私たちは常に「此」でもあり「彼」でもあるのです。例えば、社会(「彼」)に存在している私(「此」)は個人でありながら、(他者から見れば)社会でもあるわけです。最小社会である夫婦に置き換えて考えると、夫がいるから妻と呼び、妻がいるから夫であれる。妻がいなければ夫とは呼ばないし、その場合夫婦という社会は成立しません。彼此(ひし)共に尊重し合う円満な夫婦は健全な小社会を築き上げます。仏教の因縁法は、相手(もしくは周囲、「彼」)に思いやりを持ち、調和をたもつべきことを説いています。
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