年頭にあたり、黒岩祐治神奈川県知事にインタビューを行った。知事は「いのち輝く」をキーワードに施策を展開し、人生100歳時代に向け「未病(ME-BYO)」の取り組みや、共生社会の実現などへの思いを語った。(聞き手・露木敏博)
―昨年を振り返っての感想をお聞かせください
「これまで苦労してきたことが形になったと実感できる年でした。まずは未病ということばが、国の健康・医療戦略に明記され昨年2月に閣議決定されました。東京2020大会の役割分担・費用負担問題では、恒久施設は関係自治体、仮設施設整備費・運営費等は組織委員会、東京都、国が負担するという我々が主張してきた原理原則通りの決着となりました。また、津久井やまゆり園再生に向け基本構想を取りまとめることができました。大変苦しいプロセスでしたが、事件の悲しみを力に変え、着実に歩みを進めることができたと感じています」
―「未病」の取り組みは今後どのような展開になるのでしょうか
「一つには未病の『見える化』をさらに加速させることです。健康の状態を白、病気の状態を赤とした場合、今の健康状態が白から赤へのグラデーションのどの位置にあるのかを明確にすること。個人の行動変容につなげるには、エビデンス(科学的根拠)に基づく世界共通の指標が必要です。また未病産業研究会の参加企業は現在511社まで増加し、未病に関わる新たな商品・サービスの開発が進んでいます。未病指標を作ることはこうした動きをさらに促進することにもつながります」
―ラグビーW杯、東京2020大会へ向けた準備の進捗はいかがですか
「今年9月、セーリング五輪会場となる江の島でW杯が行われ、この大会はオリンピックのテストを兼ねる予定です。またセーリングセンターを新設し、五輪のレガシーとするために恒久施設として整備します。ラグビーW杯では準決勝、決勝戦が横浜で行われることが決まり、チケット発売も開始されます。イベント等を通じ機運醸成に努めるとともに、外国人観光客に向けた県内観光ツアーの準備等を進めています」
―「ともに生きる社会かながわ憲章」を着実に浸透させるためにどのような施策をお考えですか
「共生の理念を広げるため、昨秋台風で中止になったイベント『みんなあつまれ2017』を今年3月に延期開催します。イベントや広報だけでなく、継続的な取り組みも行っています。例えば県内の学校で行う「いのちの授業」です。授業の形は様々です。戦争体験談や、家族の闘病生活の話、動物の飼育の話。子どもたちに命について考える機会を提供し、繰り返し実施する。こうした取り組みを広げ、私たちが憲章に込めた強い決意を着実に浸透させていきたいと思います」
―今年の施策、県民へのメッセージをお願いします
「『いのち輝く』という言葉が全ての施策の基本となります。16年冒頭、人生100歳時代の設計図を描きましょうと申し上げました。昨年は人生100歳時代に笑顔で楽しく暮らす社会を目指すため「スマイル神奈川」を発信しました。私たちが作ろうとしているモデルは、日本だけではなく世界を引っ張るものになると信じています。その恩恵を受けていただくのが神奈川県民です。全ての県民の皆様のいのちが輝く社会を実現するため、しっかりと努力して参ります」
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