全国的に不登校児童・生徒数が増加する中、学校での健康診断を受診できずにいる子どもについて、一部の保護者から健康面を不安視する声が上がっている。市内では、不登校の子どもが学校外でも無料で健診を受けられる制度の導入を市に求める動きもあり、市は「他都市の事例を調査し、今後の取組を検討する」としている。
小中学校での不登校児童・生徒数は2022年度、全国で約30万人、横浜市内では8170人となり、いずれも過去最多数を更新した。
「体に異常」で認識
「不登校の子どもの多くが学校での健康診断を受診できておらず、学校外で受診した場合、保護者の自己負担となる」。そう語るのは、鶴見区で08年から不登校児などへの居場所を提供しているNPO法人「フリースペースたんぽぽ」理事・一之瀬百樹さん。同法人がこの施設を利用する不登校当事者の親など25人に、子どもの健診受診状況を尋ねたところ「半数以上が受診できておらず、体に異常が出てから健診の必要性を認識した親が多い」と分かった。
横浜市教育委員会によると、3月の市会で複数議員からの質問を受け、市は不登校が理由で23年度に学校での健診を受けなかった市立小中学校の子どもの数を調査。その結果、全科目未受診は1375人だったと判明し、市教委でもこの状況を課題と捉えている(同年度の市内の全不登校児童・生徒数は、今秋発表する予定)。
健診を受けないことで、中には疾患や家庭での虐待の痕跡などが見逃される子どももいるとみられる。他都市では、こうした事態を重く見た大阪府吹田市が3年前、保護者の費用負担無しで子どもが校外で健診を受けられる制度を実現した。
同様の制度の導入を横浜市に求め、同法人は昨年署名活動を開始。市長宛の署名は今年4月末までに1151人分が集まった。ただ、同法人が提出した請願はすでに市で調査が進んでいることなどを理由に、6月5日の市会本会議で不採択とされた。市教委は「今後の取組は他都市の事例も見ながら方向性を検討する」としている。
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