『万葉集』の「梅花歌三十二首」の序文から採られた新元号「令和」。鶴見大学図書館では改元に合わせ、所蔵する江戸時代後期の『万葉集』など貴重書3点のほか、さまざまな角度から書かれた万葉集を紹介するミニ展示を企画中だ。万葉集を専門とし、今企画を解説している同大学文学部の新沢典子教授は、新元号について「世界につながる意義深い元号」と評価する。
図書館で貴重書展示も
『万葉集』は奈良時代(8世紀)に成立した、現存する日本最古の和歌集。身分にかかわらず、天皇や貴族から、下級官人、防人などが詠んだ4500首あまりが集められている。
展示は元号発表を受けて企画。令和の由来となった『万葉集』と、その元となったとされる中国6世紀の詩文集『文選(もんぜん)』、相撲の番付表のように江戸末期までの元号を長い順に並べた『大日本年号有稔合数望』(だいにっぽんねんごうながみじかみたてすもう)の貴重書3点(いずれも江戸時代)が並ぶ。また、閲覧可能な万葉集の解説本や日本文化の紹介本なども展示されている。
期間は5月18日まで(6日まで休館)。展示見学のみ利用可能。開館時間は、平日午前8時50分〜午後9時、土曜は午後6時まで。日祝休館。入場無料。
元になった『文選』
万葉集の元として展示する『文選』は、朝鮮半島や日本など当時の東アジアで漢字・漢語の教科書のように使用されていた選集。万葉集は、『文選』の中でも、李善(りぜん)という学者が解説をつけた「李善注」付きの『文選』を典拠とすると見てよいと新沢教授は解説する。
日本では万葉集よりも古い、聖徳太子の憲法十七条(604)にその影響が見られ、平城宮址出土の木簡(745)には、『文選』李善注の習い書きが残ることから、「8世紀中ごろには、教養の素として、下級官人にまで李善注の『文選』が広がっていたとわかる」とする。
その『文選』に収められている、張平子(張衡78―139)作「帰田腑」の中に、「仲春令月、時和気清」とあり、これが「令和」の典拠となった「梅花歌三十二首」序の文の「初春令月、気淑風和」の元だという。
新沢教授はさらに意味についても言及。『文選』にある李善の解説では、「儀礼日:令月、吉日。鄭玄日:令、善也」とあることから、「『令』を『善』と明記している。だから『命令』の意味とするのは誤り」と説明した。
典拠より背景に意味
「令和の典拠は万葉集と言っていい。ただ、国書か漢籍かの議論はあまり意味がない」と新沢教授は話す。
漢文は典拠に基づくのが当たり前とされ、そこに気づき、気づかせることが、教養高い知識人のやり取りだったという背景からも、当時東アジアに広がっていた『文選』の影響が色濃いのは当然だとする。
「それよりも、当時の国際交流の最前線だった大宰府で作られた文章だということが素晴らしい」と新沢教授。多文化にふれる機会のあった大宰府と、現代の国際社会を重ね、世界につながっていく意味を持つ元号だとしている。
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