ゲリラ豪雨による河川の増水防止や水循環再生の取り組みとして横浜市が進める雨水の有効活用事業。貯留タンクや道路への雨水浸透ます設置が進む一方で、住宅への雨水浸透ます設置が進んでいない。助成制度を知らない市民は約9割にのぼり、昨年度の設置は9件にとどまっている。
「雨水浸透ます」は、雨水を地下へと浸透させる排水設備。アスファルト化が進む都市部で、雨水が大量に下水に流れるのを防ぐほか、地盤沈下の抑制、河川・井戸水などの水循環の保全、ヒートアイランド化の防止などに役立つとされている。市は地下水の涵養や水辺の緑の保全策として、道路や住宅への設置を進めているが、助成制度もある住宅への設置が思うように進んでいないのが実態だ。
昨年実績9件のみ
市環境創造局によると、昨年度、助成の対象となった住宅への雨水ます設置は9個(前年比マイナス13)。年間の目標である50個を大きく下回った。雨水貯留タンクは目標300個に対し280個、道路の雨水浸透ますの設置は目標1000個に対し約800個と他の取組みに比べても設置が進んでいない。
「助成知らない」9割
設置が思うように進んでいない背景のひとつとしては、市民の雨水浸透ます助成に関する認識不足があげられる。市が先月末に公表した環境に対する市民意識調査の結果では、助成制度について知らないと答えた人が約9割にのぼった。
市では現在、区民まつりや環境行動フェスタなどのイベント時にパンフレットを配布するなどして設置を促しているが、周知は進んでいないのが現状だ。
また市は普及が進まない理由について、「現在の建築環境の狭小化」などをあげる。雨水浸透ます設置には、建物との距離や設置場所などに条件がある。建物との距離が充分にとれず、予算にも限りのある現代の建築事情が設置に歯止めをかけている現状があるという。
助成の申請には、細かな設置条件をクリアした上で、申請書を作成する必要がある。建築知識に乏しい市民が自ら申請するにはハードルもあり、「工事業者に相談しながら進めるケースがほとんど」だという。普及啓発に加え、建築業者への呼びかけも行っている市は「住宅用雨水浸透ますは、水循環再生の観点からも他の対策と並行して行っていくのが望ましい。設置してすぐに効果が実感できるものではないため、中々理解が広まらない現状があるが、じっくり訴えていく」と話している。
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