コロナ禍で七五三の記念撮影を諦めたり、経済的な事情で着物のレンタルができなかったりした本人や保護者に向け、無料で着付けを行うボランティア団体がこの春に設立した。着付け師として働く小西歩さんが、主宰する着付け教室の生徒と月1回のペースで開催。小西さんは「一生に一度の晴れ舞台に着物を着る喜びを諦めてほしくない。気軽に利用して」と呼び掛ける。
「横浜着物ボランティアグループきものっ子」は、神奈川区で着付け専門店を営む小西さんが立ち上げた。様々な事情で七五三や成人式などの記念行事に着物を着ることができなかった人を対象に、衣装のレンタルと着付け、簡単な写真撮影をセットにした着物体験を提供している。
活動のきっかけは、知人らからコロナ禍を理由に七五三などのお祝いを諦めたという声を聞いたことだった。収入が不安定になり、高額な振袖のレンタルが難しくなった家庭などの事情も案じ、親子が無料で参加できる着物体験をボランティアとして始めようと決めたという。
親子で思い出を
着付けを担当するのは、小西さんが主宰する着付けスクールに通う10人ほどの生徒ら。「参加される方は着物体験の思い出作りになり、スクール生にも着付けを実践する場を用意することができるので、お互いに有益な機会になる」と小西さんは話す。
着物体験は神奈川区役所近くの「はーと友神奈川」=反町=で月1回ほど実施していく。初開催となった5月30日は、成人式に続いてもう一度振袖を着たかったという24歳の女性や、娘が3歳の時に七五三のお祝いができなかった母親と7歳の女児など3組が参加。小西さんが用意した着物を身にまとい、施設に隣接する反町公園での記念撮影などを楽しんだ。
着物文化身近に
余暇の楽しみにと20代で着付け教室に通い始めた小西さんは、会社員を辞めて着付けの仕事に転身。都内の老舗ホテルや銀座のホステスを担当するサロンなどで腕を磨いた。2013年に妊娠を機に仕事を休止するが、翌年には出産した我が子を抱えながら現場に復帰。同年に独立して出張着付け店を開いた。
15年以上にわたって着付けに携わってきた小西さんには、着物を着る喜びを1人でも多くの人に味わってほしという願いがある。「着付けをされている人を見ると、表情がどんどんうっとりしていくのが分かります。着物には内面を変える力がある。伝統文化だからと肩肘を張らず、気軽に体験できる場が増えたらうれしい」
着物体験では、七五三と成人式の男女用衣装、保護者向けの訪問着を用意。年齢などの細かな条件は設けず、広く希望者を受け入れる。6月27日の実施分は受け付けを終了しており、以降の開催は7月26日、9月26日、10月31日の予定。
問い合わせや申し込みはウェブサイト(https://kimonokko.jimdofree.com/)で行う。
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