海の中に沈めたソーラーパネルによる太陽光発電システムの実用化に、神奈川大学の由井明紀教授と学生らが取り組んでいる。地上に設置するのと比べて広大な土地を必要とせず、海水による冷却効果で発電効率も高いなどメリットが多いという。昨年12月には、同大と横浜市の間で海中ソーラー発電システムを含む臨海部での研究などに関する協定を締結。横浜港を舞台にした実証実験も始まる。
由井教授は精密加工や工作機械などが専門だが、主要な再生可能エネルギーのひとつである太陽光発電に関心を持ち、海中ソーラー発電システムの研究を続けている。
地上における大規模な太陽光発電施設(メガソーラー)には広大な土地が必要になるほか、山間部に設置する際には森林を切り開くなど環境破壊につながる恐れもある。由井教授は「日本は国土は狭いが、世界で6番目の排他的経済水域(EEZ)を持っている。それなら(ソーラーパネルを)海に入れてしまえばいいのではというのが研究の出発点」と語る。
由井教授によると、ソーラーパネルは素材となるシリコンの特性上、直射日光によって表面が高温になると発電効率が低下してしまう。そこで小型のソーラーパネルと水槽を使って実験を進めると、パネルを水中に沈めたほうが発電効率が高く、水温も50度より0度の方が高い出力電圧を示すことが分かった。海水の塩分が発電に与える影響もないという。
敵は「フジツボ」
以前勤めていた防衛大学校が所有する海上訓練場=横須賀市=で行った実験では、フレームで補強したソーラーパネルを水面から数センチ〜数10センチメートルの深さに沈めて設置。乱反射や水質の影響を受けたとしても海水で冷却されるメリットは大きく、地上と比べて高い発電効率が得られた。
しかし、設置から1カ月ほどでパネル表面にフジツボが付着した。「藻は水で流せば取れるが、フジツボはスクレーパーでも削り落とせない」(由井教授)。どうすればフジツボの付着を防げるか――。そこで生きたのが、専門とする精密加工などの知識だった。
由井教授や学生らはフジツボが付着するメカニズムを参考に、パネル表面に微細な凹凸を付けるなどの加工を施すことで解決の道を模索している。まだ実験段階だが、成功すれば船舶にフジツボや貝類が付着するのを防ぐ特殊塗料の代替技術となることも期待できるといい、「塗料による海洋汚染のリスクも減らせる」と由井教授は話す。
「いつか世界の海で」
横浜市との協定により、今後は横浜港内の一角で実証実験を行う。2メートル四方の発電設備を用いて地上や海上、海中の深度など設置条件による比較や気温、海水の濁度が及ぼす影響などを調べるという。市内臨海部の脱炭素化に向け、海中ソーラーで発電した電力を使った停泊船舶への電源供給なども検討していく。
由井教授は「世界中が再生可能エネルギーに注目する中で、今後柱となるのはソーラー発電。地上では設置場所が限られる中で、海に注目していくのは自然な方向ではないかと思う」と話し、ゼミ生で工学部4年の小松亮太さんは、「まだまだ基礎研究の段階ですが、いつか世界中の海に発電システムが設置される日が訪れたら」と夢を膨らませている。
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