浄土宗三宝寺(樋口芳宏住職)=台町7の1=は10月21日、「ゆらむろ忌」講演会を開催した。第21世住職である大熊弁玉の和歌(短歌・長歌)を通して、横浜の歴史・文芸などを紹介する同講演会。コロナ禍で約4年ぶりの開催となり、約120人が来場した。
横浜開港題材に
三宝寺の住職だった大熊弁玉は、幕末から明治にかけて文明開化を題材にした歌人で、横浜の異人館やガス灯、人力車夫、蒸気車など横浜開港の文明開化の新事物や世相、現象を題材にした作品を多く残している。
多くの史料は、横浜大空襲で焼失してしまったが、郷土史家らの協力を仰ぎながら収集作業を進め2014年に弁玉の史料を展示するコーナーを寺の一角に設けた。そして、16年に弁玉の雅号である「由良牟呂」に因んで名付けられた「ゆらむろ忌」講演会が開始された。その後も弁玉の命日にあたる4月25日に合わせて同講演会が開かれるようになった。しかし、新型コロナウイルスの影響で20年4月に開催予定だった講演会が延期に。それから3年半が経った10月21日に復活した。
女性詠った作品紹介
講演会当日は、前・司馬遼太郎記念館学芸部長の増田恒男氏が「弁玉―神奈川奉行所通訳・木村敬弘との交友」と題して弁玉との和歌を通した交流などを解説したあと、元NHKのアナウンス部長でテレビ朝日の「徹子の部屋」やTBSのドラマ「半沢直樹」などでナレーションを務めた山根基世氏が登壇。弁玉が詠った8首の長歌と3首の短歌を解説を交えながら朗読した。
紹介した和歌は、鉄道自殺を図った女性や横浜の遊郭で外国人と枕を交わすことを拒み命を絶った遊女、外国人の妾となった「羅紗棉」と呼ばれる女性など、女性の悲哀を題材にしたものが中心。そうした和歌を通して開港期の横浜の姿も紹介している。樋口住職は「延期となっていた『ゆらむろ忌』が再開でき嬉しく思います。講演会を機に、大熊弁玉のことに興味を持っていただければ嬉しい」と話した。
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