決算委員会で提言 市政報告 救急車の適正利用を議論 横浜市会議員 田中紳一
令和5年度決算委員会が10月に行われました。会派を代表して「消防局」の審査において、本市が抱える重要課題等について質問・議論をいたしました。
出場件数過去最多
急速な高齢化を迎えつつある本市においては、将来にわたり市内救急医療体制を維持・向上させることが大きな課題の一つです。実際、令和5年度の横浜市の救急出場件数は、過去最多となる25万4636件を記録しました。消防隊1隊あたりの出場件数も、10年前から271件増。さらに臨時的に救急隊を増隊した日数も令和元年度が15日であったのに対し、令和5年度は156日にまで増加。これらの数字は、救急需要の急増とそれに対する救急隊の数の不足を如実に物語っています。
こうした事態に対して、救急隊員の確保はもちろんですが、「救急医療の適正化」も極めて重要です。救急搬送者の約56%を高齢者が占めますが、高齢世代は他世代と比較し、入院が必要な中等症以上の方が多い状況。高齢化が進む市内で、”真に必要な救急需要”がより増えていくことが類推されます。
一方で、救急搬送の約半数は軽傷というデータもあります。同年度の出場件数のうち、病院への搬送を辞退・拒否した例は約4万件。「頭が痛い」「飲酒後休憩、搬送は必要ないが自宅まで送ってほしい」など、身近なクリニックの受診等で対応できる内容や不適切なものが少なくありません。
有料化の検討も
消防庁の基準や消防法では、救急要請があった場合は必ず出場することが定められています。こうした法制度の下、救急車の適正な利用を進めるには実効性のある取組みが不可欠。その一つとして「救急の有料化」が挙げられます。実際に三重県松阪市では、搬送されて入院等に至らなかった軽症の場合、「選定療養費」として7700円を徴収する取組みを6月から開始。その結果、救急出場件数は前年比約20%減少(参考数値)となりました。また、茨城県でも12月から同制度の導入が検討されています。これらを提言したところ、副市長は、制度の導入については国の動向を注視する必要性があるとした上で、「市民の皆様に救急車の適正な利用についてご理解いただく。広報などもしっかりと進めていかなければならないと考えております」との、前向きな返答を得られたと感じております。
もちろん、救急の有料化は、市民にとっては耳の痛い話です。しかし、急激な高齢化を迎える日本で最大規模の人口を抱える本市だからこそ、”救える命を救う”という救急医療の最大の使命を果たす上では避けられない問題です。従来の制度に捉われることなく、今こそこれまでと異なる実効性のある異次元の取組みが必要な時です。
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