片倉にある介護事業所「ひだまり片倉」で6月24日、「たぬきちカフェ」と題した、コーヒー片手にこれからの地域社会について語り合うイベントが開催された。このカフェを主催するのは、今年1月に設立された(株)たぬきち商事(秋丸アルハ代表取締役社長)。同社は「屋根のない長屋をつくること」を目指し、地域住民とペットに寄り添うサービスを片倉から展開しようと活動している。
地域で暮らし続けるには
(株)たぬきち商事が主催する「たぬきちカフェ」は今年3月から毎月1回、第4土曜日に「ひだまり片倉」=片倉1の6の16=で開催されている。4回目となる6月24日には「地域で暮らせなくなる理由って何だろう?〜みんなで一緒に考えよう!Vol.1〜」をテーマに開き、地域住民などが参加した。
登壇者は、シニアの住まいやまちづくりについて知見を持つ(一社)CCRCウェルネス研究センター代表で同社の佐藤順一郎監査役と介護事業を展開する(株)つながりの代表で「ひだまり片倉」を運営する同社の神馬幸子取締役。ウェブでもライブ配信も行った。
家族から地域へ
神馬取締役は、日々地域で介護事業を展開していくなかで「この30年で高齢者の生活の常識が大きく変わってきた。今までは、生活の周りに家族がいっぱいいて安心して老後を迎えられたが、少子化や核家族化が進み、身寄りがなく地域で暮らせなくなる高齢者が増えている」と問題提起。
佐藤監査役は「介護保険制度のもと、介護事業者が生活を守っていく仕組みができているが、住み慣れた地域で住み続けたいのに、介護が必要になったら高齢者施設に入ることになってしまう方や制度の範囲内でしか暮らしや生活ができなくなってしまうなど、シニアが豊かに暮らすためには様々な課題がある」と続ける。
そして「いつまでも住み慣れた地域で住み続けるためには、家族に代わり地域が果たす役割が大きくなっていきますよね」と神馬取締役。佐藤監査役は「こんな時、『屋根のない長屋』が地域にできたら、人も地域も豊かになると思うのです」と話し、より具体的な地域での事例や地域のあるべき姿についての意見交換が来場者も含めて展開していった。
「あつ森」を参考
秋丸代表や、家族に代わり介護や医療、終末期のサポートを行う(一社)LMNで代表理事を務める遠藤英樹副社長ら4人で同社を今年1月に設立。「たぬきち商事」という名称は「あつまれ動物の森」というゲームに登場する「タヌキ商店」を参考にネーミング。家具や道具の購入などができ、ゲームにおいては欠かせない存在だ。
秋丸代表は「『あつまれ動物の森』は活動すればするほど、ゲーム空間が豊かになっていきます。地域も同じで動けば動くほど仲間ができ、参加すればするほどコミュニティの中で多くのことができるようになります」と説明し「私たちはそうした地域を目指し、環境づくりに取り組んでいます」と紹介する。
ひだまりを居所に
同社が目指す「屋根のない長屋」は、2015年に国の有識者会議によて定義された日本版CCRC構想(※1)が土台となっている。
長屋の機能は、▽自分を支えてくれる人がいる(と思える)▽情報が止まらずつながって、問題を解決する力を持つ人に届く▽目的もなく、ふらっと寄れる場所がある▽最後まで暮らせる住まいが地域にある、の4項目。それらを果たすために、神馬取締役が運営する介護事業所「ひだまり片倉」を地域の居所として構え、片倉地域を対象に月2回の交流事業や月々1500円で希望者に週1回御用聞きを行い、生活の困りごとを支援する事業などを行う。
ペットの支援も
同社はペットのサポートも視野に事業を展開。愛玩動物飼養管理士の資格を持つ秋丸代表は「介護が必要となり、高齢者施設に移るときにペットの世話をする人がいなくなってしまい、住み慣れていない場所に移されてしまったり、殺処分も起きている。また、ペットを飼いたいのに飼い主が高齢のためにあきらめてしまう人などの課題もある」と話し「動物にとっても人にとっても、安心して豊かに暮らせる環境づくりに力をいれていきたい」と意気込みを話し、まずは片倉地域を対象に新たな地域づくりに挑戦していく。
※1 日本版CCRC構想とは「東京圏をはじめとする高齢者が、自らの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要な時には継続的なケアを受けることができるような地域づくり」を指し、その後「生涯活躍のまち構想」に変化。各地でプロジェクトが進められている。
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