台風19号の浸水被害を受けた川崎市市民ミュージアム(中原区)の所蔵品について、川崎市は修復していく方針を10月31日の市議会文教委員会で明らかにした。総数26万点の修復総額は見通せていない。また文化財やフィルムなど9万点にかけていた保険は、水害の補償対象外だったことも分かった。
市民ミュージアムは1988年の開館以来、美術館と博物館の複合施設として市に縁のある画家作品展や漫画雑誌の企画展などを開催。歴史資料や美術品、漫画資料約26万点を所蔵していた。
今回の台風では、所蔵品の大部分が泥水に水没し損傷。うち指定文化財など評価額42億円相当の9万点にかけていた動産保険は火災や盗難が対象で、浸水による被害は想定していなかった。
これを受け、市は費用を負担し補修する方針を決めた。今後、同館周辺に仮設の一時保管所を設置し、学芸員らが洗浄や補修を進めていく。しかし作業は長期化が見込まれ、かかる費用などの目途もたっていない。同館担当者は「雑誌など紙資料の場合、修復は難しい。断念するものがどれほどあるか、損傷状態から判断していくしかない」と話す。
危機管理問う声も
また、市策定のハザードマップでは、ミュージアムの浸水想定が「最大10メートル」にもかかわらず、地下に収蔵庫があった。10月31日の市議会文教委員会で市市民文化局担当者は「開館当時は温度や湿度を保つため、収蔵庫の地下配置は問題なかった」としたが、市議からは危機管理を問う声が挙がった。
院展(日本美術院)で内閣総理大臣賞などを受賞する日本画家で、昨年33点の作品を市に寄贈した大矢紀氏(83)=麻生区在住=は「もともと沼地だった場所の美術館収蔵場所が地下にあるなんて。価値あるものを管理する感覚が市になかったのでは」と話す。
今後の収蔵場所について「再び地下に戻すことは考えられない。長期保存に適した環境として、ミュージアム上層階のほか、移設も含め検討する」と市担当者は話す。
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