「関東東海花の展覧会」の品評会(枝物部門)で農林水産大臣賞を受賞した 吉田 貴次さん 宮崎在住 49歳
遅咲きの花桃職人
○…日本最大規模の花の展覧会で、馬絹の伝統的な枝物として知られる「花桃」が最高賞に輝いた。「3年ぶりの開催で思い入れも深かった。賞のためにやっているわけではないが、自信にしたい。やっとスタートラインに立てた」と喜ぶ。
○…育てる上で特に気に掛けているのが「花の色」。水揚げ剤に砂糖を入れたり、乾燥させないように管理を徹底することで鮮やかな「桃色」となるという。「経験に勝るものはない」。枝を細い紐で束ねる「枝(し)折(お)り」技術の第一人者である父や兄のもとで、江戸時代末期からの伝統を受け継いでいる。
○…宮崎小・宮崎中の出身。花桃を植えてある山についていくことはあったが、「兄が継ぐだろう」と家業には見向きもしていなかった。基礎化学を学び大手菓子メーカーに就職したが、配属されたのは品質管理部門。「ヒトゲノムの解析がやりたくて入社したのに、商品の栄養成分表示などを担当していた」と当時を振り返る。
○…「データ重視の仕事を経験してみて、正反対の農業の素晴らしさがわかった」。31歳のときに一念発起し、転身を果たした。地元に戻ると青年会の一員に。馬絹神社の秋の例大祭では神輿を担ぐこともある。「多くの人に祭りを楽しんでもらいたい」
○…「企業の歯車の一つとして働くのではなく、腕一本で実益が見えるのが楽しい」と生産者としての醍醐味を語る。こう言えるようになるまでには、人知れず努力を続けた。「守るものができて自覚が芽生えた」。転機となったのが結婚。スキューバダイビングを通じて出合った妻と小4の娘の寝顔がやる気の源だ。「やっと娘に胸を張って仕事を自慢できるかな」と、この日一番の笑顔を見せた。
6月28日
6月21日