「タヌキの看板、たくさんあるな」。車で道を走っていると、ふとそう感じた。記者は小学6年生のとき、自然豊かな北海道に住んでいた。「シカの看板とか、さまざまな動物看板が数多くあったけど。川崎市内はどうなんだろう」。そんな疑問を解決するため、6月から調査を始めた。
記者の見たタヌキの看板とは、動物注意の警戒標識のことだ=写真【1】。
国が管理する国道であれば、国土交通省というように、同標識は道路の管理者が設置している。
川崎市が管理している道路(市道・県道など)では、どのくらいの標識があるのか。市の道路公園センターで設置数などを調べてもらった。
麻生区が最も多い
結果はというと「タヌキ」は市内に27カ所あるという。区別だと宮前区には西野川3丁目に1カ所=写真【2】、多摩区8カ所、麻生区18カ所。市の北部に集中している。
そもそも、標識はどうして立てられたのか。
多摩区の同センターの担当者によると、多摩区内の8カ所は設置された時期がかなり古く、どのような経緯で立てられたかは、記録がなく不明だという。「設置の基準はない。おそらく事故の可能性など住民からの要望によって、設置されたのでは」と推測している。
多摩区内は日本女子大学附属中高付近の女子大通りや生田緑地周辺など緑豊かな地域にあった。8カ所はすべて府中街道よりも南側で、多摩川沿いにはなかった。
最も多かった麻生区。記者の気付きは、間違ってはいなかったようだ。
設置時期は1995年に7カ所、2017年1カ所、18年1カ所、21年3カ所。そして、今年2月に4カ所が設置された。新しく設置された麻生区の岡上(2カ所)は「タヌキの交通事故を減らすため」、虹ケ丘(2カ所)は「道路上にタヌキがよくでるため」設置要望(陳情)が住民からあったのだという。
麻生区の同センターの担当者は「運転者に対して、動物が急に飛び出してくる可能性があることを注意喚起している」と設置意図を話す。
市が管理する道路の多摩区内の距離は420Km、麻生区内は535Km。この約1000Kmの総延長に26カ所の標識がある。見かけた時、記事を思い出してもらえたら、書いたかいがある。
謎は多い
北部にタヌキは多くいるのか。かわさき宙と緑の科学館(久保愼太郎館長)の学芸員・高中健一郎さんによると「統計データとして、タヌキが北部に多く生息しているかは不明」だという。生息している数を把握するには大規模な調査を行わない限り難しいだろう。
科学館では、2012年以前にタヌキが死んだ状態で発見された採集地点を示した地図や、剝製が常設展示されている。気になる人は、足を運んでみてはいかがだろう。
標識のデザインは川崎市が設置したものは統一。だが設置主体によってデザインもさまざま。国道246号(高津区津田山陸橋交差点付近)にあった標識は、なんと白いタヌキだった=写真【3】。文言も動物「飛び出し」注意となっていた。
また、中原区と高津区の区境にある「巌川橋交差点」付近の中原街道沿い(高津区千年688付近)には、「カルガモ」の飛び出し注意を喚起する案内標識も。もしかしたら、他にもさまざまな動物に関わる標識があるかもしれない。謎は多い。調査を続けよう。
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