5月2日に92歳で亡くなった川崎市ゆかりの絵本作家、かこさとし(加古里子 本名・中島哲)さんと親交のあった北野書店(幸区)が6月13日から15日までエポックなかはらで「かこさとし展」を開く。昨年から準備を進める中での訃報となったが、企画展を通じ「数多くの作品を残したかこ先生の創作の原点が幸区在住時代のセツルメント活動で育まれたことを、多くの子どもたちのために伝えたい」と主催者は力を込める。
同店主催の川崎市学校図書展示会の同時イベントとして開催するもので、かこさんから直接「川崎のことだったらお手伝いする」との話があった。
北野さんは10年ほど前、かこさんとの共著で絵本を制作した東京理科大前学長・藤嶋昭夫妻を通じて「特別な縁を持ち」、交流を深めた。かこさんの優しさに触れ、「何かできることはないか」と思案。多くの人に地元ゆかりの絵本作家であることを紹介しようと、書店でかこさんのフェアを開催してきた。
「川崎の子どもから学んだ」
『からすのパンやさん』、『だるまちゃん――』シリーズをはじめ600点以上の作品を残したかこさんは、東大工学部を卒業後、幸区にあった研究所に勤務。1950年代後半から70年まで近くの東古市場や市内に在住した。戦後間もない頃の古市場地域は、バラック平屋が立ち並び、厳しい生活を送る人が大勢いた。かこさんは休日になると、セツルメント(生活向上のための社会事業)活動に尽力。紙芝居や幻灯作品を制作し、子どもたちに読み聞かせを行っていた。創作活動の原点で「川崎の子どもたちから学んだ」と、かこさんは語っていたという。
川崎らしい作品を展示
フェアは、現在流通するかこさんの絵本600点を展示するほか、川崎を描いた複製画や川崎在住時代の写真を並べる。北野さんは「かこ先生は平和や多様性など様々なメッセージを絵本に込めていた。子どもたちの幸せのために、創作の原点を知り、より身近に感じていただければ」と語る。展示会は入場無料。午後1時から7時、最終日は午後5時まで。
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