区内宇奈根にある「カワサキスイミングクラブ」に所属する松下彩花さん(諏訪在住・29歳)が先月、津軽海峡を泳いで横断する事に成功した。準備期間を含め3年を要したこの壮大なチャレンジ。「誰かが(自身の成功を受けて)『何か挑戦してみよう』と一歩を踏み出す後押しになれれば嬉しいですね」と、喜びを語っている。
松下さんは海など自然の中で行われる長距離水泳競技「オープンウォータースイミング」で日本代表に選出されるなど、国内トップクラスの選手として活躍。通常、競技では10Km程度の距離を泳いでいるが、今回挑んだのはその3倍の距離(30Km)。さらに世界で最も成功への難易度が高いとされる7つの海峡(通称・オーシャンセブン)の一つに選ばれている「津軽海峡」に狙いを定め、準備を進めてきた。
挑戦すら「狭き門」
こうした海峡を横断するような大掛かりなチャレンジの場合、先導する船の確保やルート選定などを一手に請け負うマネジメント会社に依頼する必要があり、松下さんもエントリーした。だが元々、津軽海峡は横断チャレンジできる日数が年間を通しても少なく、他にも多くの挑戦者がいるため自身の順番が回ってくるまでに要した期間は「約3年」。その間は同クラブでインストラクターのアルバイトなどをしながら泳力を養い、来(きた)るべき日に備えサポートしてくれる人を探すなど、体制を整えてきた。
数時間足掻く場面も
ようやくチャンスが巡ってきたのが今年7月。与えられた候補日のうち天候や潮の流れなどを考慮しチャレンジ日を「7月25日」に決定。当日は朝4時頃、本州青森県の津軽半島から北海道へ向けて泳ぎ始めた。
当初は順調に進んでいたものの、津軽海峡の特徴でもある「予測のつかない波とうねり」が松下さんを襲来。一時は海流に押し戻されるような形となり、その場で前に全く進めず、ただひたすら足掻くような状態が、数時間続いたのだという。
「家族のタッパー」支えに
そんな状態を救ってくれたのが周囲のサポート。20分に1回のドリンクと、1時間に1回の固形物での栄養補給は海に浮かんだまま行わなければならず、先導する船に乗り込んだ家族が担当。タッパーに入れたようかんやおにぎりを海面に投げ入れ、挑戦をバックアップした。こうした支えをもあり難局を乗り切った松下さんはその後も泳ぎ続け「10時間59分56秒」のタイムで北海道の松前港に辿り着いた。
ゴール後、GPSで経路を確認したところ、海流の影響で大きく迂回しており、結果的に泳いだ総距離は「42Km」にも及んでいたという。
「誰かのため」喜び一入(ひとしお)
挑戦前「自分の限界にチャレンジし、誰かのために泳ぎたい」と話していた松下さん。「(今回の成功が)『誰かの何か一歩』を踏み出す後押しになれれば嬉しいです」と笑顔を見せていた。
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