川崎市
市議と若者が意見交換
「政治参加意識」醸成狙い
11月15日
大学生が主体となって溝口などで中高生に学習支援を行う無料の塾「かわさき芽吹塾」が、5月で活動3年を迎えた。代表の吉沢春陽さん=横浜市在住=が友人と生徒ゼロ人から始めた塾は今、生徒約30人が学び、講師は大学の垣根を越えて約50人に広がっている。
6月中旬の土曜日、この日は高津校と中原校の2校合同で授業が行われ、会場いっぱいに生徒と学生が隣同士に座り、時に楽しそうに語りかける声が響いた。中学3年生から通う高校1年生の女子生徒は「ここに来て勉強って楽しいものなんだって分かった」と笑顔で語る。
代表の吉沢さんは現在、中央大学に通う4年生。大学入学後はアフリカの貧困問題に関心を持ち海外ボランティアを志したが、コロナ禍で困難に。そこで自然と目が向いたのが、日本国内の貧困だった。日本の子どもの7人に1人(当時)が相対的貧困状態にあると知り「海外よりまず日本だなと」。
高校時代のバレーボール部の同期に「子どもたちに無料で教える塾を作りたい」と声をかけ、協力を得て仲間と開校。場所は生徒・講師にも利便性の良い溝口を選んだ。
生徒たちの居場所に
現在は高津校(高津市民館・てくのかわさき)と中原校(エポックなかはら)で活動。当初生徒はいなかったが、 多い時には約40人、講師は26大学からの学生約70人に。有料の塾に通うのが困難な中高生たちに個別指導での学習支援・教材提供等を行い、学生らだけで協力して運営する。
中高生と大学生という歳の近さから「家族や先生に言えない悩みを言えて良かった」と話す生徒もおり居場所としての役割も果たす。活動3年の節目に吉沢さんは「寄付の応援も増え、生徒にしてあげられることが増えた」と手ごたえを語る。
「体験格差」是正の取組みもその一つ。旅行に行きたくても経済的に難しいケースも多いことから、昨年には夏休み期間にサマーキャンプと勉強合宿を初めて実施した。食費を含む宿泊行事の他、塾の会場費等も全て個人の寄付と社会福祉協議会の助成金から賄う。
「挑戦」に格差の壁も
生徒の受験も3度経験し、大学受験は全員が希望の大学に現役合格できた。高校受験でも「(学費負担の少ない)公立校に受からなければならないプレッシャー等があるなか、全員合格を掴んで嬉しい」と話すが、複雑な思いもある。
高校受験では特に、多くの受験生のように私立校を併願するなどして本来の行きたい学校に挑戦してほしいが、公立校に入るため確実に合格できる志望校に変えざるを得ず、挑戦できないケースもある。「本人次第ではあるが、経済的な環境の違いで挑戦する機会を失う現実がある。そこは生徒も自分も心残り」と、もどかしさも。
入塾には無料塾が必要な明確な理由などが条件だが、希望者は多く、会場の収容能力等の関係から待ってもらっている状況。 吉沢さん自身は今年、就職活動を控える。塾が今後も続くよう、後輩に引き継ぐことを目標にしつつ、社会人になっても取組みは続けていくつもりという。「通いたい子は多いので川崎市でまず支援を広げ、将来的には他の地域で真似してもらえるロールモデルになれれば」と話す。最終的な目標は「無料塾がなくても良い社会」にすることだ。
寄付や講師も受付中。詳細は同塾HP(ホームページ)。
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11月15日