全国で初めてヘイトスピーチに刑事罰を科す「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が制定されて12月で3年を迎えた。ヘイトスピーチの根絶を目指す市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は8日、市教育文化会館(川崎区富士見)で記者会見を行った。インターネット上での人権侵害の被害を防ぐため「ネットモニタリング」制度の活用を訴える。
他都市の「希望のモデル」
条例制定の効果について、駅前などでヘイト街宣は継続するものの、「殺せ!」「死ね!」といったあからさまな差別扇動表現は避けられ、ヘイトスピーチを繰り返す状況は「大きく改善された」とする。同様の条例制定を求めて声を上げる相模原市や沖縄県の市民らにとって「川崎の条例が希望となっている」とも強調する。一方で、インターネット上での差別については「改善らしい改善の進展がない」と指摘。同ネットワーク事務局の三浦知人さんは「条例制定3周年を機に、被害者に向き合い、『ヘイトスピーチは許されない』と顔の見える人権救済の取り組みを大きく展開するために、市民と市議会が一緒に施策を求めていく流れをつくりたい」と力を込める。
インターネット上の人権について、今年3月には川崎市人権尊重のまちづくり推進協議会が被害者救済の観点から条例を積極的に運用するよう福田紀彦市長に答申。同ネットワークは答申の完全実施を求める。
会見ではまた、全国200以上の地方自治体が実施し、効果を上げているネットモニタリング制度の活用を提言。兵庫県宝塚市や鳥取県などの事例を挙げた。兵庫県尼崎市では2019年年度に137件を削除要請し、116件、約8割が削除されたと紹介。神奈川県でも差別的な書き込みの削除をプロバイダー企業に直接依頼することが検討されている点についても触れた。同ネットワークのメンバーで在日コリアン3世の崔江以子(チェカンイヂャ)さんは「行政が本気でやれば効果が出る。被害を止めることができる条例に基づかなくても、人権条例施策としてすぐに対応ができる」とネットモニタリングの実施と自治体による削除要請の推進を求めた。
同ネットワークは今後、市議会の各会派に現状や課題を説明して回る予定。「被害者救済の顔の見える施策」が行われるようにしていきたいとしている。
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