全国の「子どもの権利条例」をデータ分析したところ、全国に先駆けた川崎市の「子どもの権利に関する条例」の「本気度」が改めて確認された。ITベンチャーの社長で、条例の普及・啓発活動を続ける「かわさき子どもの権利フォーラム」事務局の山田洋志さん(43)=高津区在住=が分析し、昨夏の自治体学会川崎大会で発表した。
「川崎市子どもの権利に関する条例」は、日本が1994年に「子どもの権利条約」を批准したことを受け、2000年に市が全国に先駆けて条例化し、翌年施行した。「安心して生きる権利」や「ありのままでいる権利」など子どもたちの7つの権利を保障し、「子ども会議」など権利を守る制度についても条例に定めている。
川崎以後、全国で「子どもの権利条例」の制定が進み、現時点で69の自治体で条例が制定されている。山田さんはこれらの条例について、テキスト化してデータを分析。すると川崎の条例が「基本」となったことや「本気度」の高さが確認されたという。
まず文章を単語に分けたうえで、それぞれの文章を比較する手法で分析。条文に使われる単語が重なるほど「1」に近づくが、市の条例との対比で約98%の自治体が0・7以上以上だった。山田さんは「かなりの頻度で川崎の条例が直接・間接的に参考にされたことが分かる」という。
制度も充実
条例が保障する権利の数では、川崎は「7」だが、国連の「子どもの権利条約」が掲げた「4つの原則」に倣った自治体が圧倒的だった。条例に関連する制度に関しては、【1】「権利の日」【2】「こども会議」【3】相談・救済制度【4】行動計画【5】検証制度の、5項目の有無を点数化して10点満点で算出したところ、川崎市は9点で岐阜県多治見市、埼玉県北本市と並び1位に。「0点」の自治体も複数あった。抽象的な内容の自治体もある一方で、川崎の条例は【1】〜【5】のすべてを備えており、山田さんは「権利を守るための制度が充実している」と述べる。
「子どもの権利条約総合研究所」の顧問で元早稲田大学教授の喜多明人さんも「川崎市の条例は他のどの条例にもない特色を持っている」と指摘する。「一つ目は審議の回数。昨今は10数回が多いが、川崎は250回を超える会議を経て作られた。二つ目は条例担当部局が教育委員会だった点。三つ目は、『部活は自分で決めたかったのに親に決められた』といった子どもたちの現実的な声を代弁して『自分で決める権利』が生まれ、現実を変えるための権利を大切にしたことです」
6月16日(日)には川崎市子ども夢パーク(高津区)で、NPO法人「わかもののまち」代表理事の土肥潤也さんによる記念講演「子どもの声を聴くために」も開かれる。先着50人。申し込みは二次元コードから。
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