10月は各自治体等で里親制度に関する啓発活動が集中的に行われる「里親月間」。川崎市内でも5日に高津市民館で啓発イベント「はぐくみまつり」が開催された。主催はNPO法人キーアセット(高津区/以下、キーアセット)と、かわさき里親支援センターさくら(多摩区/以下、さくら)。主催団体らに里親の仕組みや市内状況について聞いた。
里親とは、親の病気や家出、虐待など、さまざまな事情で実の親と暮らせない子どもを家庭に迎え、養育する人のこと。主な制度には0歳〜原則18歳の子どもを一定期間家庭に迎え入れ育てる「養育里親」、法的な親子関係を結ぶ「養子縁組里親」等がある。市内の相談窓口は「養育里親」をキーアセットが、「養子縁組里親」をさくらが、市から委託。それぞれ啓発、里親のリクルート、研修、家庭とのマッチング、アフターフォローまで行う。
里親増が子の選択肢に
川崎市によると市内では、2023年度末時点で全体として215世帯が里親として登録。実際に委託里親として子どもを育てる家庭は76世帯で、88人の子どもが暮らす。児童養護施設や乳児院等の施設で暮らす子どもは約250人(里親家庭除く、22年度末時点)。個々の背景や状況は異なるため、この数が里親を必要とする人数となる訳ではないが、委託時は子ども・里親双方の状況に応じてマッチングを行う必要があるため、里親等を必要とする子どもの数以上の登録数を確保する必要がある。
特に乳児期の委託が多い養子縁組里親に比べ、子どもの年齢が上のケースが多い養育里親は「その子にとってより良い選択肢があるかという意味では、登録数は足りていない」とキーアセット職員は話す。里親を必要とする中高生も多いが、受け入れ家庭が少ないのが実情という。
「子どもの背景や状況は一人ひとり違うので、里親家庭の選択肢が増えることがより良い生活につながる。養育里親制度は知らない人が多いので、正しく知ってもらうことが課題」と話す。
「実親の存在否定せず」
キーアセットによると養育里親として暮らす場合は実親家庭で培った文化や経験、個々の背景や特性を持つ子どもと、新たな家庭が成り立つまでの擦り合わせが必要となる。実親と関係が続くため家庭で暮らせなくなった理由が虐待だったとしても実親の存在を否定することは子どものルーツの否定につながるため、実親の存在を受け入れる葛藤等もあるという。
それでも里親のもとで暮らすことで「特定の大人が自分のために見守り関わってくれることで信頼、愛着関係を作れる。安心安全な環境や家庭で生活する経験を持つことができる」と同職員。
関心広がり
養子縁組里親でより多いのは不妊治療を経て里親を希望するケースだが、養子縁組、養育ともに、不妊治療を経た人のほか「子どもたちのために」と希望するケースも。養子縁組里親の制度を担当するさくらの職員は「説明会に来る人は増えている印象。実子を育てる方の登録ケースも増えてきている」といい、キーアセット職員も近年は子連れで説明会に来る人が増えていると語る。
「家庭には一人親家庭や祖父母が育てる場合などいろいろな形がある。里親も特別な家庭ではなく、いろんな家庭の一つとして会話できるような地域になれば」とキーアセット職員は語った。
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