今から1カ月前、菅義偉官房長官が発表した新元号「令和」。その墨書を揮毫した内閣府大臣官房人事課・辞令専門職の茂住(もずみ)修身(おさみ)さん(63)は、南生田在住の多摩区民。発表当日の朝、茂住さんは氏神である長沢の諏訪社を訪れていた。
「4月1日の朝早く、いつものようにご夫妻でお参りに来ていた。『今日は特別な仕事があるものですから』と話していて」と振り返るのは、諏訪社で宮守を22年務める藤井征史さん(80)。藤井さんが茂住さんと知り合ったのは、18年ほど前。社殿の扉を開ける毎月1日と15日の朝に、決まって夫婦で参拝に訪れるという。藤井さんは「いつもあいさつを交わす。盆や暮れには、献酒としておいしいお酒を持ってきてくれる」と関係を語る。
藤井さんが「特別な仕事」の内容を知ったのは、新元号発表からおよそ1週間後のこと。例年の奉納とは違う時期に、茂住さんが献酒に訪れた。「そのとき、『私が書いたんですよ』と聞いて。今回いただいたお酒は特別なもの」と、直筆の文字が書かれた掛け紙も大切に保管している。
茂住さんは岐阜県飛騨市出身。「平成」の墨書を手掛けた河東純一さんと同じ、大東文化大学の卒業生だ。書家としては「茂住菁邨(せいそん)」の号を持ち、日展会友で、読売書法会理事や神奈川県美術展審査員を務めている。展覧会が近づくと、諏訪社の社務所を借りて大きな書をしたためることもあるという。
茂住さんは20年ほど前に生田に移り住み、その後、南生田に居を構えた。「諏訪社と深いご縁のある方、多摩区愛のある方だと思う」と藤井さん。長沢地域の活性化に取り組む長沢まちづくり協議会会長の末吉一夫さん(69)は「地元にそのような方がいることを誇りに思う。これから地域に協力していただけたらうれしい」と期待を寄せた。
800年超の歴史
長沢地域の氏神として親しまれている諏訪社(長沢4の7の1)は、1187(文治3)年、稲毛三郎重成が創祀したとされている。社殿前の護石を病気平癒のお護りとして持ち帰り、成就したら石の数を倍にしてお礼参りや奉納をするなど、昔からの習わしも続く。
諏訪社総代の岸井洋一さん(76)は「800年以上の歴史ある場所。代々の氏子に守られて、今では一般の方もたくさんお参りに来ている。今後も多くの人に訪れてもらえたら」と話している。
![]() 茂住さんが書いた「献酒」
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![]() 諏訪社の社務所
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