川崎市を流れる二ヶ領用水が3月10日、遺跡関係の文化財として国登録記念物に正式決定。流域に案内板を新設しようと、市教育委員会は文化庁への補助金申請を進める。市は関連団体と連携し、市民に一層親しまれる観光資源として広報と活用に力を入れていく。
市が所有する二ヶ領用水は、多摩区から川崎区に広がる多摩川右岸低地部を流れる用水。文化財登録範囲は合計約9キロの流域で、市内では禅寺丸柿に続き2件目、遺跡関係では初。用水関係では立梅用水(三重県)に次ぐ全国2件目の国登録記念物となる。
文化財対象の形を変えることを厳しく規制する「指定」に対し、活用に重点を置く「登録」制度では届け出れば改修も可能。広報費用の一部は補助金交付対象になる。市教委は流域の複数箇所に案内板新設を検討中で、「活用事業を進める所管の建設緑政局と協議し、活動団体の意見を聞きながら周知に有効な場所を選定する」と表明。2020年度中の設置を目指す。
これまで市は、宿河原堤桜保存会やNPO法人多摩川エコミュージアムなど流域で活動する13団体との意見交換を進めてきた。「桜の管理や周辺の清掃を担う地元団体から課題を聞き、市民と一体で担うべき役割を考えたい」と市建設緑政局。「この機会に、身近で大切な財産として定着を図る」としている。流域の桜関連イベントを通じた情報発信を見込んでいたが、今年は新型コロナウイルス感染症の影響で相次いで開催中止に。同局は今後の周知方法を検討するほか、用水竣工400年を記念して作られた散策路のガイドマップ更新も視野に入れる。
二ヶ領用水は江戸時代の1611年に完成した多摩川最古級の農業用水の一つ。農業・工業用水として使われ、時代の変遷とともに桜や桃の植樹など市民活動も盛んに行われてきた。市によると、今回の登録はこうした変化の歴史も評価材料になったという。
区内団体 思い集う
二ヶ領用水が流れる多摩区で、文化財の登録範囲の一部にあたる宿河原地区。流域で活動する市民団体の一つで、桜の木を維持し管理するために1974年に結成した「宿河原堤桜保存会」(関山泰司会長)では、雑木刈りや桜の苗木植栽に取り組んでいる。
環境や景観保全を目指し、同会や宿河原町会、PTAなど有志が集い「二ヶ領用水宿河原堀を愛する会」(関山武男会長)が2005年度に発足。清掃や花植活動を続けており、昨年11月には広報や地域交流を推進しようとフェイスブックのページを開設した。
「愛する会」の生みの親で、「保存会」とあわせて両団体の事務局を務める戸田賢一郎さん(79)は、「宿河原の住民にとって、二ヶ領用水は生活から切り離せない大切な宝物で、景観や桜に愛着を持っている」と強調。今回の文化財登録について「ここ10年くらいはずっと登録を目指してきたのでうれしい。行政と連携しながら活性化につなげられれば」と思いを語る。
宿河原堀で宿河原町会が毎年夏に開催する「灯籠流し」を盛り上げようと、宿河原駅前商店会(高橋利之会長)では3年前から竹明かりのオブジェを企画。市立稲田中学校の美術部が製作を担当している。高橋会長は「水辺を使って、桜開花の時季だけでなく通年で地元以外の人たちも参加できるイベントが企画できれば」と模索する。
市観光協会の斎藤文夫会長は「南北一体で、後世に伝えていけるようなイベントを秋口あたりに開催したい」と展望を示した。
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