川崎市医師会の会長で、ダイヤモンド・プリンセスでの医療チームに参加した 岡野 敏明さん 登戸在住 60歳
「患者を診る、それだけ」
○…新型コロナウイルスの集団感染が起きた大型船で先月、日本医師会の医療チーム(JMAT)に川崎市医師会として従事。医師11人が参加し、半日交代で4日間にわたり乗員らを問診した。「日頃の診療と同じ。目の前に苦しんでいる人がいたら診てあげたい」。感染防衛という難敵と向き合いながら、原点の姿勢は変わらない。
○…幼少に亡くした祖父の診療所がある登戸で生まれ育った。姉2人と妹1人、両親と祖母で暮らし、地元・カリタス学園の幼稚園から4期生として小学校へ。母校では現在、校医を務める。愛知医科大学医学部を卒業後は、宮前区の聖マリアンナ医大病院に入局した。研修医だった当時、クロイツフェルト・ヤコブ病という神経難病の男性患者を担当。妻が付き添う前で医師は手袋をつけて診察するという特別対応で、亡くなったときも病理解剖しない判断が下された。「今思えば、ご家族に申し訳なかった」と思いをはせる。
○…2002年、岡野内科医院を父親から継ぎ3代目院長に。多摩区の休日夜間急患診療所が近所のため、当番医不在になると駆けつけた。会員1300人以上が所属する市医師会では、副会長を経て昨年6月、会長に就任。現在は新型コロナの脅威と対峙する一方、感染症ではない疾患を見落しかねない現状を危惧する。最近診察した発熱とせきに苦しむ男性は、肝臓に膿みを発見。すぐに入院させた。「疑わしい症状は何でも自宅待機、というのは患者を危険にさらしかねない」
○…感染症対策だけでなく、災害時の急患診療所の運用など市医師会として課題は山積だ。担当医のリスク管理を考慮しつつ、「行ける医師が診てあげればいい。地元の患者の不安を解消したい」。そう一途に思う。
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12月20日