俳優・三船敏郎氏や民俗学者・柳田國男氏など、多くの著名人が眠る南生田の公園墓地「春秋苑」。NHK連続テレビ小説「エール」のモデルとして話題の人物、作曲家の古関裕而氏(1909〜89)もまた、春秋苑に眠る一人だ。同氏の命日である8月18日を前に、墓所を訪ねた。
古関氏の墓所があるのは「南5区1側9番」。春秋苑の中でも古い区域で、南部の高台に位置する。苑内を一望でき、富士山も望める見晴らしの良い場所だ。
同苑の広報紙に掲載された長男・古関正裕さんのインタビューによると、春秋苑に墓所を構えたきっかけは長女・雅子さんの勧めだったという。昭和50年代、生田に引っ越してきた長女夫婦が同苑に墓所を購入。雅子さんから「良いところ」と聞いた古関氏は、すぐに購入を決めた。「富士山の見える場所」は古関氏の妻・金子さんの希望だ。
福島県に先祖代々の墓を持つ古関家にとって、春秋苑はもう一つの安息の地。正裕さんは「僕ら姉弟が『いつでもお墓参りに行けるように』という、父なりの優しさだったんだと思います」と語っている。
生涯で約5千曲を生み出したといわれる古関氏だが、その功績は神奈川県にも遺る。相鉄線を運営する相模鉄道の社歌や、横浜市立大学の校歌を担当。特に、聖マリアンナ医科大学(宮前区)とは大きなつながりがある。
ドラマの風俗考証を担当した大倉精神文化研究所(横浜市)の刑部芳則さんによると、雅子さんの夫・染谷一彦さんが同大学の設立に従事。その関係で校歌の制作を引き受けたという。大学病院は古関氏のかかりつけ医院になり、最期のときも過ごした。
晩年は体力の衰えで作曲活動を停止したが、入院中も瞑想にふけっていた古関氏。刑部さんは「頭の中にあった幻の名曲を聴くことができないのは残念」と思いをはせる。
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