インターネットのチャットで全国から相談を受ける窓口「あなたのいばしょ」。昨年6月から、初の行政との連携として川崎市サイトに外部リンクが設けられ、同サイト経由で4月までに100人以上が利用した。運営するNPO法人は今後、相談傾向などのデータを市と共有し、孤独を早期発見する仕組みをモデル化して全国へ波及させたい考えだ。
無料・匿名で24時間受付
「あなたのいばしょ」は、スマートフォン等から文章による対話で悩みを無料・匿名で相談できる窓口として昨年3月に開設。「望まない孤独」の根絶を掲げ、24時間365日、国内外の相談員700人以上がチャットで応じる仕組みだ。
学校や家庭、仕事に関する悩みなど、3月末までの相談者は4万8541人にのぼり、4月は1日平均で約400人だった。窓口を運営するNPO法人あなたのいばしょ理事長の大空幸星(こうき)さん(22)=慶応大学4年=は「つらくても声を出せない、相談できない人の声を引き出すのが私たちの役割。行政との連携で、必要に応じて相談者を警察や児童相談所など地域の機関につなぎ、継続的に支援していくのが狙い」と説明する。
NPOの事務局は35人で、運営資金は寄付や助成金でまかなっている。昨年1年間の運営費は約5千万円という。大空さんは「川崎市との連携による成果を国に示したい」と展望を話す。
教育に活用 模索
子どもに「生きるのが嫌になった」と言われたら、家族や教員はどう応えればよいのか--。大空さんが構想するのは、相談側と受ける側に分かれ、チャット機能で疑似的に対話する教育プログラムの作成。「例えば市内学校のいじめ相談のチャット内容を解析して得たデータを、市の具体的な政策に生かしてもらうこともできる」と大空さん。川崎市を含め、自治体や学校との連携を模索し広めたいという。市精神保健課は「悩みにはさまざまな背景がある。相談先として大切な選択肢の一つ」としている。
警察統計による川崎市の2020年の自殺死亡者数は198人で、前年比7人増。2年連続で微増傾向にある。市は13年制定の自殺対策に関する条例に基づき、コロナ下の心理的影響も踏まえ、第3次自殺対策総合推進計画を今年度から3カ年で始動。若年層への支援を教育分野等と連携しながら進める方針で、年代別の実態分析と対策に注力する。
市サイトへのリンク設定は、昨年の市議会で吉沢章子市議が提案。一般質問で児童虐待対策、特別委員会で自殺対策として取り上げた。これを受け、6月にこども未来局、9月には健康福祉局のページに設けられた。
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