川崎市緑化センターの正門からまっすぐ進むと、温室横の休憩所内に一つの本棚がある。名前は「みんなのほんだな」。武蔵野美術大学大学院造形構想研究科の岩崎友彦さん(48・修士2年)=長尾在住=が、7月上旬に設置したものだ。
本棚にはベストセラーや植物関連の絵本が100冊。園内の芝生やベンチで読むことができ、気に入った絵本は持ち帰ることも。代わりに、自宅から一冊を持ってきて交換することになっている。「毎週見に来ると変化がある。今のところ自動的に上手くまわっている」。開始からおよそ2カ月、地域の中で循環していく形が見えてきた。
価値が循環する 身近な場
出版社で編集者としての経歴を積んできた岩崎さん。母校の筑波大学では非常勤講師として編集を教える一方、美大大学院に昨春入学。「出版に携わってきて、今までと同じ考え方じゃダメだなと思ったのが最初。自分で改めて学び直したい」。同級生にはビジネスマンも多く学びを深める中、修士研究に選んだのが今回の取り組み。絵本を使い、地域の文化デザイン促進をテーマに掲げた。
本棚設置を自宅近所の緑化センターに相談し、快諾。初めに用意した絵本はすべて古本で、リユース活動を行う企業から無償で譲り受けたものだ。「デジタルはどんどん画面から消えていくけれど、本は新品じゃなくても価値は変わらない。こういう手触りをみんなで受け継いでいけたら」と岩崎さん。同園の菊地徹所長は「地域の公園はコミュニティの場でもある。人と人がつながる取り組みとして、一緒に育てていきたい」と思いを寄せる。
岩崎さんは今後も、アンケートを取りながら研究を続ける。「資産を上手に再活用し、みんなが喜べるような仕組みに。おうちに絵本があれば、入れ替える体験を楽しんで」
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