能登半島地震の発生を受け、市立多摩病院(宿河原)の医師で救急災害医療センター長の田中拓さん、看護師の岩崎恵子さん、國谷さやかさん、臨床工学技士の矢田哲康さん、事務員の塚本嵩仁さんの5人が、神奈川DMATとして1月27日から30日まで、石川県七尾市へ派遣された。被災地にある福祉施設や避難所で、主に現況調査や情報収集を担った。
石川県からのDMAT6次隊の派遣要請を受け、5人は能登中部保健福祉センターを拠点に、七尾市周辺にある延べ10カ所以上の福祉施設や避難所を巡回した。
診察と助言
「施設を通常の営業に戻すために必要な情報収集や避難されている方を診察しアドバイスなどを行った」と田中さん。ある福祉施設は建物の耐震調査が入らないため電気の引き入れ工事ができない状況だった。通電すれば水の汲み上げが可能になるが、それもできず、当面の間は休業を余儀なくされた。従業員をどう維持していくかが問題になっていた。「これからどう食べていけばいいのかと、職員の方々はひっ迫した状態だった」と田中さん。また、どの施設も大きな問題となっていたのが断水で「飲み水は給水車や備蓄でなんとかなっていたが風呂に回す水がなかった」。ある施設は車で1時間かかる地域の介護施設で風呂を借り、体の不自由な人がする特浴はできていない状況だったという。
コロナ陽性者の診察のために訪れた施設もあった。隔離期間が訪問日に解除されたものの、手指に掻きむしった跡があったため感染症を疑い近隣医の受診を促した。「地域の病院やクリニックが回復しつつあったので、診察し助言をして、その地域の医療につなげることが任務だった」と田中さんは振り返る。
七尾市内にある小学校や市民体育館、集会所などに設営された避難所も訪問した。國谷さんは「避難所によって段ボールハウスの整備や囲いなどによるプライバシーの保護など環境の違いが見えた」と話し、「市町村によって備蓄物や予算も違うので統一するのは難しいと思うが、避難する場所によって環境が変わってしまうのは問題だと感じた」と話した。
多摩区で同様の震災があった場合、経験をどう生かすかとの問いに田中さんは「今回のように、ある程度、急性期を過ぎた段階ではいかに外部から支援にきた人たちと自分の地域の医療をつなげるかというのがとても難しく大きな役割になる」と語った。また当初は、懸命に日々を過ごす被災地の人にとってDMATへの対応が負担となってしまうことを懸念していたと明かした上で、「顔を合わせると歓迎してくれた。私たちに聞いて欲しいことがたくさんあるということがわかった。被災者と支援者をつなぐという役割も当事者の病院として求められるのではないか」と述べた。
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