プロレス団体「ヒートアップ」(多摩区)に所属する兼平大介選手(40)がこのほど、地元の石川県に拠点を移し、プロレスに親しめる場を作ることを決めた。9月に金沢市内で実施した復興支援大会でもらった多くの声が決断を後押しした。「能登半島地震や能登豪雨に襲われた故郷。石川をプロレスで元気にする。覚悟を決めるのは、今しかなかった」と語る。
子どもの頃からの夢を叶えようと、30歳直前で上京した兼平選手にとって石川県は「プロレスラーを夢見て育った場所」だ。2014年に同団体からプロデビュー。以来、麻生区の新百合トウェンティワンホールなど、各地で熱い戦いを繰り広げてきた。
今年の元日に故郷を襲った能登半島地震。帰郷すると「テレビなどのニュースで見るよりも想像以上に大変な状況だった」。家に住めなくなった友人も。「石川県を元気にしてほしい」という声を受け、入場無料の復興支援大会を9月23日に企画。大会前の2日間は、兼平選手自身が金沢市内でチラシを配布するなどPRに奔走した。直前に能登豪雨の被害があり中止も検討したが「今、見せられるものを全力で。できることをやろう」と開催に踏み切った。当日、会場には約350人が詰めかけた。
実際の試合を見るのは初めてだった母親も「楽しかった」と笑顔。老若男女問わず「勇気づけられた」「面白かった」という声が聞かれた。
そんな声に気持ちが揺れた。「『また来ますね』ではいけないと思った。拠点を移し故郷に恩返しをするなら、今のタイミングしかない」。大会直後に気持ちが固まった。
今年末にヒートアップを退団し、来年から石川県で自ら団体を立ち上げ、道場の開設や、月1回ペースでの大会実施を計画する。同団体の田村和宏代表は「寂しい気持ちはあるが『プロレスを文化にしていく』という志を石川県でやり遂げる兼平選手を応援したい」と思いを話す。兼平選手は「決断ができたのは、川崎での10年間があったからこそ。川崎の人たちには感謝しかない」と笑顔を見せた。
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