死刑囚として47年7カ月の獄中生活を送った元プロボクサー・袴田巖(はかまたいわお)さんの再審無罪が今年10月に確定した。2014年に再審請求が認められ、釈放されてから、10年の節目に完成したドキュメンタリー映画『拳(けん)と祈り-袴田巖の生涯-』(笠井千晶監督)が、11月23日(土)から川崎市アートセンター(麻生区万福寺/【電話】044・955・0107)で上映される。
袴田さんは1966年6月、静岡県で起きた強盗殺人、放火事件の犯人として逮捕され、長期にわたり収監された。30歳で投獄され、死刑囚としていつ刑が執行されるかわからない日々。14年の釈放時には78歳になっていた。今年9月に静岡地裁が再審無罪の判決を下し、10月9日に検察が上訴権を放棄したことで無罪が確定した。
多摩区登戸にある川崎新田ボクシングジムの新田渉世会長(57)は、日本プロボクシング協会袴田巖支援委員会のメンバーとして袴田さんを支えてきた。新田会長は2004年、ジムの会員との会話をきっかけに袴田事件を知った。支援団体の人から「ボクサー崩れという偏見で逮捕され、理不尽な取り調べを受けた」と聞き「そんなことがあっていいのかと憤りを覚えた」。06年に勉強会などの活動を始め、理事を務めていた東日本ボクシング協会では支援委員会の発足を提案。イベントなどを通じてさまざまな支援を続けてきた。
面会にも足しげく通った。袴田さんは長い拘禁生活により正常な会話が困難な状態だったが「ボクシングの話はかみ合った」と新田さん。「死刑の恐怖に怯えながらボクシングが心の支えだったのだと思う」と推しはかる。無罪確定を聞いた時は「喜びに打ち震えた」と新田さんは振り返る。
映画は02年から袴田さんの姉・秀子さんと交流を深めてきた笠井監督が、冤罪や死刑囚という言葉で括られてきた袴田さんを「一人の人」として伝える。「逮捕前の袴田さんは事件と全く無関係の30年の人生を歩んでいて、特にプロボクサーとして輝いていた時代がある。その時代を丁寧に辿ることで袴田さん自身の人生にスポットを当てたいと考えた」と作品への思いを述べる。また、袴田さんが新丸子のボクシングジム「不二拳闘倶楽部」に所属し、プロボクサーとして活動したことにふれ、「川崎市で映画を上映できることは、袴田さんにとっても特別なことだと考えている」とコメントを寄せた。
上映は11月23日と24日(日)、26日(火)〜29日(金)。午後6時40分上映開始。一般1800円ほか。23日は笠井監督が会場を訪れ、上映終了後に舞台挨拶を行う予定。
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