2021年7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害。今月には最後の行方不明者の遺骨が確認され、死者は28人となった――。当時、緊急消防援助隊神奈川県大隊の指揮隊長として第1陣で派遣されていたのが、多摩消防署警防第1課長の落合真一さん。落合さんは2月15日、多摩防火協会主催の講演会で過酷な現場の活動状況を振り返った。
4日間 指揮執る
川崎市でも大雨警報と洪水注意報が発令された災害当日。落合さんは当直で多摩消防署に勤務していた。土石流の第一報が入ったのは午前10時半ごろ。消防庁長官からの要請を受け、市消防訓練センター(宮前区)に横須賀や鎌倉を含む川崎ブロックの消防隊が集合。午後9時、現場に向け出発した。川崎と横浜、相模原の計3ブロックで構成される県隊は、熱海市内のMOA美術館駐車場に拠点を構えた。仮眠をし、翌午前4時20分に救助活動が始まった。
「一面が土砂に埋まっているような状況で、どこにどのような建物や道があるか全くわからなかった」。破損した家屋や原型をとどめていない車、土砂に埋もれた商店と、深刻な被害を目の当たりにした。第1陣としての活動は4日間。「3つの班に分け、『活動』『安全管理』『休息』のローテーションで動く。短い時間の中で次の活動に備える」。警察や自衛隊、行政職員らと情報共有し、翌日の活動に向けて担当区域など方針を定めた。このとき、多摩消防署からは6人が派遣。テント設営や食事の準備をする後方支援隊の存在もあった。
多摩市民館大ホールで行われた同講演会には、130人以上が来場。枡形中学校の生徒数人も参加し、耳を傾けた。現場の写真を用いた落合さんの説明に、来場者からは「改めて見て災害の怖さを感じた」「学んだことを家庭に持ち帰って考えていきたい」との声が聞かれた。
多摩区では、生田地区など丘陵地を中心に土砂災害警戒区域が広がっている。落合さんは「多摩区も急傾斜地が多い地域。災害は身近なところに潜んでいるので、普段から備えてほしい」と思いを語った。多摩防火協会の岸井洋一会長は「いつ地元で起きるかわからない。一人ひとりが今日の講演を振り返り、将来を考えてもらえたら」と力を込めた。
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