9月29日に全130話の最終回を迎えたNHK連続テレビ小説『らんまん』。植物学者・牧野富太郎さんの人生をモデルとしたオリジナルストーリーとして、好評を博した。毎回番組の最後に、牧野さんにゆかりのある植物の写真が紹介される。その写真を参考に全130話分、ハガキサイズの色鉛筆画として描き切ったのが、長尾に住む上原さつきさん(80)だ。
午前8時から15分間の番組を見た後、録画した番組を一時停止し、ボールペンで3分程度で模写。その後、約10分で色を付けていく。8時30分には1枚が描きあがる。
そして、9時までの間にその回に登場した植物の絵も数枚描き加えた。午後に手直しを行い、その日のうちに毎回完成させた。
溢れる達成感
4月3日から始まった同ドラマ。3話目のときに最終回まで絵を描こうと決心した上原さんは、約半年間で363枚を描き上げた。「130話分描き切った達成感で、満足した気持ちで溢れている」と今の心境を話す。
全130話の中で、特に気に入っているのは、ユキワリイチゲだという。「前に、前に出るのは好きではない。人目に付かず、静かに咲いている花が好き」と理由を語った。
体調も回復へ
約4年前から、アレルギーの症状が強く表れる病気を患い、コロナ禍も重なり、外出することができなかった上原さん。心が沈んだ状態が続いた。昔から大好きだった絵で、自宅での時間を楽しく過ごしたいとの思いから始めた。「段々、やっていくうちに楽しく、心がわくわく、どきどきする気持ちが沸き上がった」と振り返る。体も徐々に回復し、今では夫と外食に出掛けることができるようになった。
「足腰が悪く、外出できない人もいる。さまざまな人がいると思うが、自宅での楽しみを見つけることが人生の豊かさにつながると思う」と笑顔を見せる。植物画を友人らに見せると「毎日の努力がすごい」などと褒め言葉をもらったという。
「絵が人生を支えた」
服のデザインを学ぶ専門学校を卒業後、ファッションデザイナーとして活躍した20代。結婚を機に、専業主婦となり子育てが始まった矢先、33歳で難病を患った。46歳で完治するまで13年間、入退院を繰り返す日々を送った。病気でも描きやすかったパステル画を独学で始めたのは40歳のとき。個展を開催するほどになり、近所の子どもたちが絵を持ってきて、アドバイスも行うようになった。「絵や子どもから元気をもらった」と振り返る。同時に、水彩画や油絵など、さまざまな絵を描くようになっていった。
50歳の時に「二科展」で初入選し、59歳で二科神奈川支部展で大賞を受賞。ニューヨークやハワイでも作品を展示した。69歳で同展の会員(審査員)となり、2023年9月に長年の悲願だった同展会員賞を受賞した。
「私の人生は、絵で埋め尽くされている。難病のときも、今も、絵に元気をもらった。ピンチをチャンスに変えてくれた存在。絵があったからこそ、80歳まで生きてこられた」と上原さん。創作活動はまだまだこれからも続いていく。
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