麻生区岡上在住の映画監督・今井友樹さん(44)がメガホンをとり、ツチノコの謎に迫ったドキュメンタリー映画『おらが村のツチノコ騒動記』が5月18日(土)から、都内の映画館を皮切りに、順次全国公開される。全国各地で取材し聞いた目撃談から、その存在の有無だけでなく、今井監督のツチノコに対する気持ちの移り変わりや、環境の変化などを描く。
幻の生物・ツチノコは、「何かを飲み込んだ蛇みたい」「ビール瓶を横に倒したような形」と、さまざまな目撃談がある。同作は、9年の歳月をかけて、目撃情報があった10都府県40カ所を取材し、ツチノコの存在や、それを取り巻く環境の変化を描いたドキュメンタリー映画だ。今井監督は「形や動き方などの共通項はあるけれど、それぞれのオリジナリティーもある。あちこちで話を聞いたからこそ、バラエティー豊かな話が盛り込めた」と自信をのぞかせる。
目の輝きに惹かれ
主要な舞台である岐阜県東白川村は、今井監督の故郷。目撃報告が多いことから、1989年から毎年村をあげて捜索イベントを開催するなど、ツチノコとの縁も深い。「どちらかというと大人の方が熱心で、皆目をキラキラさせていた。そんな姿に当時は憧れた」と今井監督は目を細める。
一方で、高校進学を機に村から離れると、「ツチノコなんて絶対にいない」という周囲からの言葉も多く聞くように。徐々に故郷への気持ちは冷め、ネガティブな感情まで抱くようになっていった。
信じる姿に驚き
転機が訪れたのは、日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業後、映画制作のために故郷で取材をしていた時だった。取材対象者が呟いた「あそこの石垣が壊されたから、ツチノコはいなくなっちゃったんだろうな」という一言に、今井監督は驚いたという。「存在を疑わず、いるという前提で話していたのが印象的だった」。これを機に、「自分が作らなくては」と意を決し、ツチノコを追うドキュメンタリー作品を手掛けるようになった。
「あの頃見た大人たちと、目の輝きが同じだった」。動き方や姿形を、豊かな表現でいきいきと語る人たちを取材する中で、今井監督は自身のツチノコへの気持ちが前向きに変化するのを実感したという。「気にかけないもの、気になっていても分からないものはたくさんある。そういうものに思いを馳せられる生き方が重要なのでは。映画を見て、想像する意味を改めて感じてもらえれば」と気持ちを込める。
作品内では、自身の気持ちの移り変わり、村を取り囲む自然の減少や、それに伴う生態系の変化にも触れている。「区画整理などで農地が減ったりと、小さな村だが風景は随分変わった。人と自然の付き合い方も考えてほしい」と今井監督は思いを語った。
麻生区内での公開も期待
今井監督は、日本映画学校でドキュメンタリー作品について学び、農山村漁村の記録映画で知られる「民族文化映像研究所」(東京都)に所属。その後独立して「工房ギャレット」を設立し、地域の暮らしに根ざした映像作品をつくり続ける。
現在も監督として制作活動に励む一方、2015年から母校での指導も開始。学生時代に受講していた授業の講師として教壇に立ち、後進育成にも力を入れる。
5月18日(土)からポレポレ東中野を皮切りに、順次全国公開。今井監督は「地域の人にも見てほしいので川崎市アートセンターなどでも公開できれば」と展望を語った。
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