今年4月に起こった強風による倒木を受け、麻生区役所道路公園センターは6月20日から27日にかけて、麻生川沿いのソメイヨシノ18本の伐採作業を行った。桜の名所での伐採に担当者は、「並木の魅力は十分理解しているが、住民の生命財産を守るためやむを得なかった」と話す。
麻生川沿いの古沢交差点から柿生交差点付近までの約1・3Kmには、218本の桜が並んでいた。毎年春に行われる「麻生川桜まつり」の会場になるなど、多くの人から親しまれている。
だが、今年4月9日、強風により1本が川に向かって根元から倒木。これを受け同センターは将来的な危険性を考慮し、安心、安全な通行環境の確保のため伐採を行うことを4月中旬に決定した。作業は桜の見頃が終わり、梅雨や台風などにより川の水位が高くなりやすい「出水期」に差しかかる前の6月20日から27日にかけ実施された。
伐採されたのは18本。既に枯れていた1本を除く17本は樹木医によって、「不健全」だと診断されたものだ。これは極めて不健全な状態にあり、今後の回復が全く望めず、樹木内部の腐朽割合が断面積で50%以上あるとされた状態だという。同センターの担当者は「魅力ある桜並木であるのは十分理解している。皆さまの生命財産を守るためやむを得なかった、としか言えない」と苦渋の色を浮かべる。
この一帯の桜は1972年から75年にかけて、区画整理に伴い植えられたもの。一般的なソメイヨシノの寿命といわれる60年前後のものが多いという。担当者は、「絶対に60年で切らなくてはいけないと決まっている訳ではないが、年を取った木であることは確か」と木の老朽化についても説明する。
現在18本の桜は幹から切られ、根元は残っている状態。担当者によると、将来的には伐根作業や植栽も進めていきたい考えという。「伐採と植栽をセットでやってほしいという気持ちは分かるが、どうしても莫大なコストがかかってしまう。まずは倒木の危険性をゼロにしてから、予算を整えつつ、段階的に進めていければ」と語る。
まつりは実施へ
「ぜひあの桜並木を復元してほしい」と植栽を心待ちにするのは、麻生川桜まつりを主催する麻生観光協会の高桑光雄会長だ。「区内にここまで桜がまとまって咲いているところはない。綺麗な花が見られるよう、修復してもらえるとうれしい」と期待を寄せる。
一方で、「18本は切られてしまったが、まだたくさん桜はある。大きな影響もないので、次回も桜まつりは実施する予定」と話した。
丁寧に周知
今回伐採を進めるにあたり、同センターは地域住民に理解を求めるため、周知活動に注力した。近隣の住宅約630軒に、作業内容や経緯、日程や今後の対応などを記したチラシを配布。ほかにも、麻生観光協会や区町会連合会、各町会への事前説明や、伐採予定の木に張り紙掲示などを行った。
担当者は「このような件にしては大変珍しく、反対の声はほぼ挙がらなかった。丁寧に対応したことでご理解をいただけたのではないか」と振り返った。
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