安楽寺で地獄絵解き 大道芸人が藪入りの日に
区内下小田中の安楽寺(宗澤文良住職)で1月16日、江戸時代の中期に描かれた六道地獄絵について解説する「絵解き口上」が行われ、大道芸研究会会長の麻布十兵衛氏(本名:栢木興太郎)が地獄という世界やそこでの罰などについて語り、来場者を楽しませた。
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六道地獄絵は、罪を犯した人間の死後の世界観を描いたもので浄土教が広まった平安時代以降、道徳的な考えを広めるために多くの作品がつくられたとされている。
安楽寺の六道地獄絵は、江戸時代の中期に描かれたもので11枚の掛け軸として所蔵され、地獄の釜の蓋が開く日とされている藪入りの1月16日と8月16日の年2回のみ公開している。過去には寺子屋としての役割を果たしていた安楽寺では3500人余りの子どもたちが通い、この絵を見ながら勧善懲悪などを学んでいたという。
3年前から住職の親戚で大道芸人の麻布十兵衛氏が大道芸のパフォーマンスの一つでもある絵解きを始めた。同氏は「とても素晴らしい文化財産。絵を展示するだけではなく、どのような意味や歴史があるのか多くの人に知ってもらいたい」と信仰的に語り継がれてきた口承文芸を基に、ユーモアな表現を加えた解説を行っている。
「正しく文化継ぐ」
今回の絵解き口上には、約30人が参加。麻布十兵衛氏は一つ一つの絵に込められたストーリー等について話し、「十王は現在でいう裁判官。最高裁が閻魔大王。亡者の善悪の見極めにつかわれた浄玻璃の鏡は今でいう防犯カメラ。今日ここに来ているのも映されているから皆さんは罰が軽くなるかも」と会場を笑わせた。参加した60代男性は「今までどんな行いをしてきたか振り返りながら話を聞いた。とても楽しかった。地獄も極楽もあの世ではなく目の前にあるんだね。日ごろの行いが大切だよ」と話した。
川崎市では1989年に川崎市民ミュージアムで市内に残る作品を中心にした地獄絵と十王絵の展示会を実施しており、同展を企画した学芸員は「当時は市内の12件の作品を集めたが、保存の良い状態のものは減っている。絵解きに関しては関東圏でもほとんど行っていないとおもう」と述べ、今回のような絵解き口上は貴重だという。
なお、近年は、絵の一部分に人権問題に触れるという見方もあり、宗澤住職は「昔はお寺の本堂で住職が絵解きをしたものだけど、最近はほとんどない。昔の絵なので背景を説明しながら正しく文化を継ぐことが大切」と話す
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11月29日