10月12日に発生し中原区にも甚大な被害をもたらした台風19号。多摩川沿いの住宅などで多くの浸水被害が見られたが、正確な被害件数は21日時点で明らかになっていない。行政は復興に乗り出し、民間やボランティアによる支援も広がりを見せている。(10月21日起稿)。
正確な件数は不明
台風が襲った翌13日、川崎市危機管理室では中原区内の浸水被害等は約720件(上丸子山王町460件、下沼部260件)と発表。この件数は区危機管理担当からの報告を基に市消防局が地図上で算出した概数とし、被害が報告されている宮内1丁目などの件数は含まれていない。正確な被害件数について市は、現在発行している罹災証明書の申請数をふまえ明らかにするとしているが、発表時期は未定という。
甚大な被害を受け、市は様々な対策に乗り出している。居住の継続が困難な住民には、市営住宅などの公的住宅計76戸を一時避難先として受け入れを決めた。
また、床上浸水等の被害に対して市は見舞金を支給。単身世帯で5千円、2人以上世帯では1万円などと定めた。
川崎市動物愛護センターでは、ペットや飼い主への支援を実施。被災で一時的に飼育できない犬や猫を、原則2週間以内預かるとしている。
民間も協力
汚水や汚泥など床上浸水の被害を受けた住宅からは、家具や畳などが災害ごみとして大量に出されている。これを受け、市は18日から、等々力緑地催し物広場を災害ごみの仮置き場として開設。市生活環境事業所による収集のほか、民間の川崎建設業協会が支援に加わり18日から3日間で延べ74台の収集車を出動。区の担当者は「おかげで当初の予定より処理日数が早まった」と話す。
川崎浴場組合連合会に加盟する浴場(中原区、高津区、多摩区の一部)では、18日から無料入浴サービスを開始。自宅が被災し風呂を使用できない人に提供している。
16日に、川崎市総合福祉センターに設置された災害ボランティアセンターには、初日から5日間で延べ415人が受付。家屋の片づけ、泥のかき出しなどの作業にあたった。活動に参加した区内に住む神谷明子さんは「同じ中原区とは思えぬ惨状の大きさに驚いた。少しでも力になれれば」と話し、支援を受けた甲山文成さんは「家族は心身疲れていたので非常に助かった」と謝意を示した。
健康被害対策も
区衛生課では、浸水した家屋での細菌やカビの繁殖による感染症の予防に、消毒液や作業用マスクなどを配布。区のウェブサイトなどで「予防には清掃と乾燥が重要」と衛生対策を呼びかける。
また、マスク5千枚を無償提供したコスギコモンズクリニックの高木誠医師は、「湿気によるカビ、家財等の運搬時の粉じんなどは、特に高齢者やアレルギーがある人にとって肺炎などのリスクもある」と案じる。
「教訓生かされたか」
浸水被害の原因について市上下水道局は、下水の排水能力を上回る雨量による「内水氾濫」だとした。多摩川に下水を流す水門は区内に2カ所あるが、多摩川の増水により下水を流す水門から水が逆流したことも要因に挙げている。
上丸子山王町では、2年前の2017年10月にも台風21号の影響で住宅13棟が浸水。50代の男性は「なぜまた起きたのか。教訓は生かされたのか。原因と今後の対策を知りたい」と訴えた。
中原区では、昨年3月に改訂した洪水ハザードマップを盛り込んだ「備える防災マップ」を、今年3月までに区内に全戸配布した。洪水ハザードマップは多摩川の決壊などを想定しており、今回の内水氾濫とは状況が異なる。被災地域に住み、他市の行政職員として長年河川や下水道事業に携わったという60代の男性は「市のハザードマップそのものの内容は充実している。それだけに、内水氾濫を含め今後どう活用してくかが課題だ」と指摘した。
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