「カプセルの抗がん剤を毎朝6時に飲んで2年半がたちます。がんは小さくも大きくもならず小康状態。副作用を緩和させるための薬を8種類飲んでいます」と話すのは、苅宿に暮らす出木谷潤子さん(58)。39歳で左腎臓にがんが見つかってから19年。初めての全摘出手術から8年後に転移が見つかり、その後16回も手術を繰り返した。現在は腎臓、膵臓、両副腎に腎細胞がんがあると診断されながらも、手術できる場所にないため、武蔵小杉の料理教室でパン講師として働きながら、初めての抗がん剤治療に挑んでいる。
出木谷さんが長い闘病生活の中で心掛けているのは、日々くよくよ悩まないこと。「がんから逃れられないからこそ、ネガティブな感情を引きずらないことが大事。いつも笑っているのが体にも、心にも良いことだから」。治療も「前進あるのみ」をモットーに、自粛期間中だった今年4月には「コロナを怖がってがんが悪化しても困る」と、検査と診察に足を運んだ。「怖がっていたら転移は見つけられない。がんは早期発見が本当に大事だから」と検診の重要性も訴える。
出木谷さんは、治療方法や手術の決断は全て自分で決める。人を頼りすぎない方がいいというのが持論だ。「家族がお見舞いに来やすいからと近くの病院に入院する人もいるけど、私は遠くても自分のために最善の治療をしてくれる病院を探すべきだと思う」と言い切る。自身が罹患した際、シングルマザー同然で子育て中だったため誰かに頼ることは難しかった。「泣き言や弱音は言ってられなかった。お陰様で強くなりました」。
がんになっても楽しく生きることを伝えたいと、2年半前に自伝を出版。闘病生活を赤裸々に綴った。きっかけは、闘病中に読んだ関連本が難しかったから。「手術3、4回の人が本出してて。自分は手術の回数だったら負けてないぞ」とお茶目に笑う。
これからも希望を捨てずに「楽しいこと」に挑戦しながら、頑固ながんに笑顔で挑み続ける。
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