令和元年東日本台風で被災し、現在も休館中の川崎市市民ミュージアムがこのほど、復旧・復興へ向けた1年間の活動記録を動画にまとめて公開した。水没した約23万点の収蔵品の搬出や修復などについて共有し、今後の文化財の保全と防災について役立てる機会にしたい考え。
2019年10月の被災当時から関係者が撮りためていた記録写真などをまとめ、市民や関係者へ報告するため、1年間の節目を機に同館主導でプロジェクトを始動。当初は文書で報告する予定だったが、話し合ううちに「映像としてまとめた方が伝わることが多いのではないか」と考え、動画を制作して一般公開することに決めた。
動画は同館の被災直後の様子や被害の概要、当日対応していた職員の証言など、およそ40分にわたる。収蔵庫を一つひとつ開けて確認していく様子や搬出経路の確保、仮設ユニットハウスの建設など時系列で説明。被災した文化財を救い出すため、美術品修復に詳しい外部団体へ救援依頼する様子も登場し、エンドロールには携わった個人・団体100以上が記載された。
プロジェクト担当者の一人、安尾祥子さんは「被災には市の責任もあると考えている。動画の内容が身内で盛り上がっているように見えないよう、淡々とフラットな印象になるよう心掛けた」と話す。ナレーションの声色や使用する音楽について、何度も検討したという。安尾さんは動画について「前例がないからこそ貴重な記録になる。あくまでも当館の記録だが今後、全国の美術館などで誰かの役に立てるかもしれない」と話した。
同館の収蔵品約23万点は被災から8カ月後の昨年6月にすべての搬出を終えた。水に弱い写真やフィルムなど、優先度の高いものから作品の状態を安定化させるための応急処置や修復作業が、今も行われている。
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